介護施設は、運営していても利用者がいなければ事業としてなりたちません。
質の高いサービスを提供しているのにもかかわらず利用者が集まらなければ入居率は上がらず、運営も低迷してしまいます。
そこで、介護施設の入居率を上げる方法について、サービス付き高齢者向け住宅の場合を例に説明します。
高齢化が進む日本では、介護施設の数も年々増えています。
競争が激化する中で、高齢者住宅財団が実施したアンケート調査によると、満床の施設の割合はサービス付き高齢者向け住宅の場合でたった23%であり、全体の77%は空室という結果でした。
施設数全体の4分の1は、入居率80%以下で、満床ではありません。
入居施設の損益分岐点は85~90%と見られているため、利用者が獲得できなければ赤字経営となり、事業継続が困難になる恐れもあります。
サービス付き高齢者向け住宅事業は、土地所有者に建物を建ててもらって、家賃を払い一括で借り上げるサブリース方式や、自社物件として事業を行うケースがあります。
どちらの場合でも、土地所有者に家賃を支払うことや、金融機関からの借入金返済が必要となるため、早期の段階で稼働率を上げての収入確保が不可欠となるでしょう。
住宅改良開発公社が実施したサービス付き高齢者向け住宅開設の運営者対象のアンケート調査では、目標稼働率は90%以上と回答しているものの、目標稼働率達成までにかかると予想される期間は約70%が1年未満としています。
達成するのであれば、開設前準備と開設後の利用者数獲得がポイントとなり、賃貸住宅として一定の稼働水準をキープしなければならないと常に意識しておくことが必要です。
サービス付き高齢者向け住宅の運営では、入居率を上げることが最も需要です。
入居率を上げるために、競合施設が増えても差別化を図るなど、何らかの工夫が必要となるでしょう。
損益分岐点を入居率75~80%に設定しても、大手なら特に問題なないと考えられます。
しかし中小の場合、仮に満室でも家賃収支だけでは赤字経営になる場合もあるため、訪問介護サービスなどを併設して介護事業収入を得るなど、赤字分を補填する事業も検討しなければなりません。
短期間で満室化し、2年経過時点で満室状態がキープできていることが、経営を安定させるひとつの目安といえます。