老人ホームへ入所する理由は人それぞれといえますが、中には利用者へ退去命令を出さなければならないときもあります。
長く住みたいと希望する利用者に、退去してもらうように伝えることは心苦しい場合もあるといえるものの、退去要件に該当する場合は継続して入所してもらうわけにはいきません。
そこで、実際に利用者への退去命令は可能なのか、求められるケースや福祉施設に多い退去要件を紹介します。
老人ホームなどの施設で、利用者に退去を求めるケースはあります。
施設への入所も、賃貸のアパートやマンションと同じように、入所に関する契約書を交わすからです。
契約書に記載されている退去要件に該当することが起こったときには、利用者に引き続き入所してもらうことはできず、退去勧告することになります。
ただし、退去要件に該当するか、判断が難しいケースもあるため注意が必要です。
たとえば、通常の契約書には、「一般的な介護や接遇で対処・防止できない場合」などを退去要件として記載しています。
職員や他の利用者へ暴力や暴言などの迷惑行為があれば、上記の要件に該当するとも考えられますが、状況によっては必ずしもとはいえません。
該当するか施設と利用者で判断が分かれることもあるといえます。
福祉施設では、入居規約や重要事項説明書などに退去要件を記載していますが、たとえば以下の内容が挙げられます。
・利用料金を滞納している
・医療への依存度が高くなり施設での対応ができなくなった
・長期入院が必要になった
・要介護度の変更されたため施設の基準に合わなくなった
・職員や利用者への迷惑行為がある
・認知症・知的障害・精神障害などの症状や行動が頻繁になった
・心身の安全や安心が確保できなくなった
・入居申込書や診断書などの書類に虚偽記載などの不正が発覚した
・介護事業者側の倒産などによる都合が発生した
福祉施設から利用者へ退去勧告をする場合、なぜ退去が必要なのかその理由を説明しましょう。
また、猶予期間の説明や金銭面の精算、次に入所する施設探しまたは在宅介護の検討なども必要となります。
地域包括支援センターや居宅介護支援事業所などの相談機関への相談で、専門家のアドバイスを受けながらもっともよい方法を選ぶこともできます。
退去までの期間は、多くの施設で90日間など猶予期間を設けることが多いといえますが、新たな入所施設などの準備なども踏まえた期間設定が必要です。