福祉事業を続ける上で、人件費高騰は事業継続の大きな障壁になると考えられます。
介護や福祉の施設経営の中で、経費の多くを占める費用が人件費であるため、高騰すれば事業運営の大きな負担になるからです。
たとえば社会福祉法人における人件費率は平均で75%程といわれているため、人件費率85%を上回れば当期活動収支差額はマイナスになります。
職員の離職率が高い場合、人件費率が低くなっているとも考えられます。
そこで、福祉事業における人件費高騰問題について、サービスごとに占める割合を簡単に紹介します。
「人件費」とは、事業運営において「人」にかかる費用です。
たとえば給与や賞与がその例として挙げられますが、他にも以下の費用を含みます。
・給与
・賞与
・退職金(退職引当金)
・役員報酬
・法定福利費
・福利厚生費
・通勤費等(現物支給)
人件費に含まれる費用は幅広く、企業によって研修費や採用費用なども人件費で計上するケースもあります。
「人件費率」とは、売上に対する人件費の割合であり、利益分析において重要な要素といえます。
人件費率は、以下の2種類があります。
・売上高人件費率…売上に対する割合
・売上総利益人件費率…利益に対する割合
どちらも人件費が損益においてどのくらいを占めるのか、確認するときに確認する指標です。
人件費率について、たとえば売上高人件費率と売上総利益人件費率のそれぞれの計算式は以下の通りです。
売上高人件費率=人件費÷売上高×100
売上総利益人件費率=人件費÷売上総利益×100
人件費率の適正値は、一般的に以下の割合といわれています。
・売上高人件費率…13%程度
・売上総利益人件費率…50%程度
細かな数値は、介護施設の規模や業種で異なります。
適正値の確認は、同じ業界と業種の平均値と比べることが必要です。
福祉や介護の仕事は、提供するサービスによって収益を占める人件費の割合も異なります。
たとえば介護老人福祉施設では、人件費が収益の63%程度を占めます。
訪問介護はヘルパー派遣が前提となるため、常に一定数以上の職員が必要となるため、他の介護サービスよりも人件費の割合が高く77%程度とされています。
通所介護の人件費は、収益の約63%を占めますが、利用率に対して人員を過度に配置する施設が多いといえるでしょう。