福祉や介護業界は、介護報酬の9割が公金から支払われるため、価格競争に巻き込まれにくく経営は安定しやすいといわれています。
しかし深刻な人材不足や、報酬改定における収益性の悪化などで苦しむ福祉・介護事業所も少なくありません。
異業種からの新規参入も増えたため、市場拡大に伴う競争激化の影響により、大手中堅事業者の新設・買収と中小零細事業者の休廃業や売却の二極化が進んでいます。
そこで、価格競争に巻き込まれにくいはずの福祉・介護業界の二極化と寡占化を解説します。
福祉・介護事業が二極化しているのは、コロナ禍の影響が関係します。
介護業界では深刻な人材不足や、報酬改定による収益性悪化、市場拡大に伴う競争激化の影響により、以下の二極化が進んでいます。
・大手中堅事業者の新設・買収
・中小零細事業者の休廃業・売却
上記により、介護業界のM&Aが増えています。
地域の中小零細企業に支えられてきた介護業界は、二極化を理由に他業界と同じく大手企業の寡占化が進んでいるといえます。
介護業界は、二極化と同時に寡占化も進んでいます。
寡占化とは、少数企業が生産や販売市場を支配する状態です。
仮に寡占化が進んだ場合、企業間競争が弱まるため、価格や生産量を少数企業が決めがちになります。
資本主義経済における代表的な市場形態であり、価格競争の起こりにくい業界です。
高齢者増加に伴い、介護業界の市場規模の拡大が見込まれています。
しかし、現場の人手不足や介護報酬改定などの影響で、収益は低下する恐れが高く、コストや人材採用の共有化などの流れは他業界と変わりません。
中小事業者の従業員の処遇を改善しても、大手企業に及ばずに、人手不足に拍車がかかる恐れもあります。
求人を出しても応募がなく、有効求人倍率は4倍近くあり、3~4社が一人の介護人材を取り合う状況です。
現場に多く人が集まれば、サービスの質も向上できるため、人材確保が急務の課題といえます。
採用難やコロナ禍による経営疲れ、介護報酬の改正や加算に行政とのやり取りなど、いろいろな理由で事業所自体の売却を検討するケースも増えています。
ただし、M&Aは人材確保の手段としての見方もできるため、介護事業を継続するための大手企業の起こす寡占化と、M&A競争で生き抜く方法を検討することが必要です。