厚生労働省介護保険部会の専門委員会では、介護現場における事務業務の負担を軽減させようとする動きが高まっています。
2019年10月に開催された専門委員会では、事務業務の負担を軽減させる妨げとなる押印ルールは明確化させ、事業所に要求する機会は最低限まで抑えることや、書類提出は郵送やメールを原則とし役所まで持参しなくてもよい対応とすることについての議論も行われたようです。
最近では新型コロナウイルス感染症の影響も懸念されており、より事務業務の効率化には注目が高まっているといえます。
将来的に手続きはすべてウェブ上での入力や電子申請のみの対応とするなど、完全なペーパーレス化を実現させる議論も行われているようです。
実際、介護施設内で作成する文書はケア記録以外にも、行政に提出しなければならない書類などがあり複雑化しています。
ケア記録にも種類が多くあり、ケアプラン、提供したサービスやモニタリングの記録、アセスメント結果、利用者の状態などいろいろです。
介護スタッフ同士が利用者やケアの内容など情報を共有するためにも必要ですし、万一の際の証拠として残すことにもつながります。
また、提供するサービスの質を向上させるための、分析や改善策の検討などにも必要といえるでしょう。
ただ、行政に提出する書類にも種類が多く、指定申請・介護報酬請求・指導監査関連文書などが挙げられます。
行政との事務的なやり取りのときに使われる書類で、実際に事務処理を行うのは自治体です。これらの書類の作成にかかる時間が無駄とも考えられ、介護スタッフの負担につながっているといえるでしょう。
そもそも介護スタッフの事務作業にかかる負担が重くなる背景には、介護業界の慢性的な人手不足が挙げられます。
人手が十分足りていれば、介護スタッフ1人が行う作業や負担も減少するため、就業時間内に作業が終わらず残業しなければならないといったことは防ぐことができるでしょう。
しかし人手が足りていない状態では、始業前や終業後に時間を割き、事務作業を行わなければならなくなっています。
このような事態を重くみた一部の事業所では、ケア記録をICT化させたり、見守りロボットなどIoT機器を導入したりという対策が講じられています。
現在、厚生労働省では介護スタッフの事務負担を軽減させるための業務の効率化に向けたいろいろな取り組みを進めていますが、介護事業所側でも最新技術を導入するといった検討が必要なのかもしれません。