介護施設と自動車産業。この2つは特に関係がないように感じるかもしれませんが、介護サービスを利用する方の送迎などで自動車は使われていますし、福祉タクシーなども利用される機会が増えています。
しかし介護施設が福祉タクシーを運営していることは多くないようですが、それはなぜでしょうか。
ときには施設にずらりと並んだ送迎車を見て、病院まで送迎してもらえないかと依頼を受けることもあるようですが、自動車を使い入居者を病院に連れていくための対価を受け取る行為は旅客運送業の許可がなければできません。
いわゆるタクシー業を行う許可を取得しておかなければならないわけですが、自動車をつかって施設までの送迎を有償で行う行為は、通所型施設と自宅の往復のみ許可なしでできることになっているから可能です。
国土交通省と厚生労働省との間で協議が行われ、自家輸送の一種として例外として認められています。
そのため介護施設では送迎専用車をずらりとそろえているものの、送迎車を使い介護施設と病院を往復することや、ドライブに対応するといったサービスを有償で提供することはできないのです。
無償ならよいのかというとそうでもなく、サービスを何か提供している顧客に対し、たとえば旅客運送のみ無償で提供してはいけないルールになっています。
介護事業所が旅客運送業のどちらの許可も取得し、福祉タクシーを行うことも可能ですが、実際にそのような対応を行っている介護施設はほとんどありません。
その理由として手間や費用がかかりすぎるため、採算が取れないことが挙げられるでしょう。
旅客事業は事故リスクが高いため、規制も厳しい状況です。まずドライバーは第二種自動車免許を取得しなければなりませんし、自動車を車検や整備の基準に常に合わせ、運営規則なども必要です。もちろん規制に適合する運営ができていなければなりません。
特に福祉タクシー事業は厳しい規制が敷かれているので、規制に適合させつつ安全を担保させるための費用をかけなければならなくなります。介護保険の対象ではないため高額なサービスとなり、利用する方も限られることになるでしょう。
そもそも介護施設は介護保険で定められた最低人数で運営されているため、福祉タクシーのドライバーとして介護スタッフが現場を抜けることになるのは、さらに人手不足に拍車をかけることになってしまいます。
介護事業とは相乗効果があまりないため、多くの介護施設は福祉タクシーの運営まで行わないのが現状です。