介護事業者の中でも老人ホームを運営しているとき、利用者に入居してもらったものの身体状態が変化したことで途中退去してもらうことが必要になることもあります。
老人ホームは亡くなるまで入居を保証する終身契約ではなく、退去要件で、契約書や重要事項説明書などに記載のある退去要件に該当する場合には、途中で退去を求めざるを得ないと認識しておくべきでしょう。
基本的には入居者が不利になる退去要件は認められませんが、入居者本人に問題が発生したときなどは退去要件に該当すると判断し、退去を求めることになります。
老人ホームなど介護事業者側が入居者に退去を求めるといっても、どのような理由でそのような状況となるのでしょう。
考えられるのは主に次の3つのケースです。
・契約書に虚偽の記載があった場合や、入居者の体調が急変し入居し続けることが困難になったなど、老人ホームが規定していた退去要件に該当した場合
・入居者やその家族が退去を望んだ場合
・介護事業所の倒産など、老人ホーム側の運営に問題があった場合
老人ホームにより違いはあるものの、契約書や重要事項説明書に記載される退去要件には次のようなことが挙げられます。
・他の入居者に対する迷惑行為があった場合
暴力や暴言、奇声を発するなど、他の入居者や職員に対し危害を及ぼす可能性が高いケースが該当します。
・入居に関する費用が支払えなくなった場合
入居後の経済状態の変化などで毎月の費用の支払いが難しくなったケースが該当します。
・入居者に重度な医療行為が必要となった場合
老人ホーム内では高度な医療対応ができるわけではないため、医療依存度が高くなったときなどが該当します。
・入居者の長期入院が必要となった場合
3か月など長期に渡りホームの居室を空けることになるなど、病院に入院したままの状態が続くときなど、老人ホームへに復帰することが難しいケースが該当します。
入居者に老人ホームを退去してもらうときには、入居時に支払ってもらった一時金のうち、未償却分は返還することになります。
また、入居者が使用していた居室の原状回復の範囲と費用については、入居期間内の通常の使用に伴う損耗は介護事業者が負担することが必要です。
ただし居室の損傷の原因が入居者の故意・過失にあれば、入居者に負担してもらうことになります。
原状回復については、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考にするとよいでしょう。