介護福祉事業情報ラボNursing care work Information Lab

入所者がマンション管理費を滞納していると介護事業者に相談があったら?

2021.12.07
分類:経営

介護施設に入所する方にはいろいろな心身の問題を抱えている方がいますが、高齢の方になるほど認知症の方も多くなります。

これまでマンションで暮らしていた方が高齢で認知症となり、介護施設に入所したもののマンション管理費が支払われていない状態が続いているという相談もめずらしいことではありません。

そこで介護事業者は、このようなケースにおいてはどのような流れで問題を解決することになるか知っておきましょう。

介護施設に入所しても管理費負担は必要

マンションの管理費は、マンションの区分所有者で構成される管理組合が徴収・管理しています。

それまでマンションで生活していた方が高齢などを理由に介護施設に入所した場合でも、その高齢者が管理組合員であり管理費を負担しなければならないことにかわりはありません。

しかし認知症などを理由に管理費の滞納が続き、たとえば会話もできない状態のときには対応に困ることもあるようです。

 

過去の裁判例と解決までの経緯

過去には、長期に渡り管理費を滞納している高齢方に、弁明の機会を付与する通知を送付し、週かいの特別決議で競売請求を提起したという例もあるようです。

しかしすでに会話もできない状態で介護施設に入所しているため、意思能力のない高齢者に弁明の機会を与えても意味がありません。

ただ裁判では、弁明の機会は形式的に通知するだけで足らないとされたものの、訴えを提起した後で特別代理人が選任され、その特別代理人にも弁明の機会を与えていたことから管理組合の請求が認められています。

そもそも意思能力のない方への訴訟行為は無効ですが、軽度の認知症なら意思能力が認められることもあります。この裁判例のように会話することができない状態では、意思疎通が困難といえるため、意思能力はないと判断されるでしょう。

認知症が重くなっていれば成年後見人が選任されますが、選任の申立ては家族や市町村などに限られるため、マンション管理組合には権限がありません。

そのためマンション管理費を滞納している方が介護施設に入所している場合には、その方の家族に成年後見人の選任を申立ててもらうようにお願いするか、市町村に相談することが必要となります。

成年後見人が選任されないのなら、弁明の通知を管理組合から本人に送った上で総会決議を行い、訴訟を提起した上で特別代理人を選任してもらうという流れが必要です。

さらに特別代理人に対し、再度、弁明の機会を与えることが必要となるでしょう。