介護業界の慢性的な人手不足解消に向けた取り組みが急務とされている中で、実際には労働基準法など法令に違反している事業所も少なくありません。
介護事業所に労働基準監督署(労基署)の立入検査が入った場合、問題が見つかれば罰金刑を科されるおそれもあります。
介護事業者は労基署の立入検査への対策も必要といえますが、具体的に労基署の検査の概要などについて理解しておくことが必要です。
労基署の立入検査は「臨検監督」といわれており、労働基準法を根拠とした事業所に対し実施されます。
労基署の臨検監督は次の4つ種類に分けることができるため、それぞれどのような検査を行うのかその内容を説明していきます。
定期監督とは、地方ごとに設けられている労基署が、定期・計画的に事業所に対し行う検査が「定期監督」です。毎年4月頃に厚生労働省が策定する「地方労働行政運営方針」に沿って、何を重点的に検査するのか決められます。
「申告監督」が実施されるのは、現在事業所で働いているスタッフや退職者などから、労基署に対し通報があったときです。
通報のあった内容から、調査の必要があると労基署が判断したときに実施されます。
事業所で労働災害が起きたときなどに、労基署が原因究明や再発防止を目的とした調査が必要と判断したとき、実施されるのが「災害時監督」です。
介護事業所は肉体労働が多いため、介護スタッフが腰痛になることで労災認定されることもあります。
ただし災害時監督の対象は、労働災害が重大なケースに限られるため、介護スタッフの誰かが肉体労働で腰痛になっただけで災害時監督が実施されるわけではありません。
・再監督
定期監督・申告監督・災害時監督で事業所に是正勧告が出され、事業所からも改善報告書が提出されたものの、改善できたのか・改善の余地はないかなど確認するための検査が「再監督」です。
是正勧告の後に、事業所から改善報告書が提出されなかったときにも実施されます。
臨検監督は、いずれの場合でも事業所への立入検査のため、事前の予告はありません。
介護スタッフの事情聴取や労働関係書類など、突然訪れて確認されます。
労基署の監督官に、今実施されているのは定期監督と申告監督のどちらかたずねてもこたえてはもらえないでしょう。
事前の予告もなく、誰が通報したのかなども確認できないため、普段から残業代や解雇手続など適正に行い書類を保管しておくことが重要といえます。