介護業界は、長く続く人手不足に施設数の増加、建設費の高騰など、とても厳しい経営環境の下にあるといえます。
新たに介護事業をスタートさせても、残念ながら廃業してしまうケースも少なくなく、廃業までは至らなくても事業譲渡など経営困難な状況に陥っていることも少なくありません。
しかしその中で、近年では異業種から介護事業などへの参入が相次ぐ動きが活発化しているのです。
介護を軸とした企業間の合併や買収などで事業を拡大する動きが目立ち、特にハイテク企業の技術を取り込む質の高いサービス提供を目指す形が多いようです。
介護事業は中小や零細の事業者が多いので、人手不足だけでなく介護報酬の実質的な減額などが影響し、経営不振状態となるケースは少なくありません。
しかし介護を必要とする方は増え続けている状況のため、簡単に廃業するわけにもいかず、会社や事業を譲渡するといった選択をする事業者は他の産業より多いようです。
2018年度は約11兆円だった介護給付費は、2040年度には26兆円まで膨らむことが見込まれており、今後、財政への負担を軽減させるために介護保険の給付が抑えられることも考えられます。
そのため、今後は保険を使った介護サービスではなく、保険が適用されない独自性を活かした介護サービスを提供できる事業所が増えることが予想されますが、そこで異業種が自社の強みを活かそうと次々に参入してくる可能性があります。
すでに異業種から介護事業へ参入している企業として、医療事務、教育事業、警備会社、飲食事業、不動産デベロッパー、建設業など、様々な他産業が挙げられます。
特にここ数年は、警備会社、電鉄系、電機メーカー、住宅設備機器メーカーなど、自社の強みをそのまま介護事業に活かせる産業の新規参入が目立ちます。
飲食事業者なら施設で提供する食事、警備会社ならセキュリティや見守り、電機メーカーはICTに最新の電機設備、住宅設備機器メーカーはバリアフリーなどの住宅設備が売りです。
利用者ニーズは現在多様化しているため、単に介護サービスを提供するだけでは選んでもらえない施設になってしまうことから、戦略としてニーズに対応できる運営が重要となっているのです。
成長が見込める産業と言われる介護業界ですが、実際には撤退するケースも少なくないのは、競合との差別化などがうまくいかず、経営難に陥ってしまうことが理由なのかもしれません。
今後も異業種からの参入が進むと考えた場合、もし介護事業だけを専属で行い成功させたいなら、何か他社とは違う「強み」を見つけることが必要になるといえるでしょう。