日本は高齢化が進み、介護を必要とする方の人数が増えるとともに、その高齢者に対する虐待が発生するといった問題が深刻化しています。
介護施設だけに限らず、自宅や医療機関など、いろいろな介護現場で起きているのが現状で、メディアやニュースなどでも取り上げられているのを目にすることもあるでしょう。
ではなぜ、介護を必要とする高齢者に対して虐待が起きてしまうのか考えてみましょう。
厚生労働省の調査結果によれば、高齢者に対する虐待件数は年々増加傾向にあるようです。
増加している理由は、そもそも高齢者が増えていること、それに伴って介護施設の数や施設に入所する方の数も増えていることが背景にあると考えられるでしょう。
そして高齢者に対する虐待についての関心や意識が高まっており、介護施設に入所する高齢者の家族が、こっそりカメラを仕掛けていたり、このまま放置してはいけないと介護職員が動画を撮影していたりなどで明らかになることもあります。
そのため、虐待があったと判断された数が増えただけであるため、虐待そのものが増えているわけではないのかもしれません。
ただ、増減に関係なく介護施設で虐待が行われることはけっして許されることではないため、防止するための対策を検討することが必要です。
国や自治体では、一般的に虐待といわれる行為について次の種類に分類しています。
・身体的虐待 暴力をふるうことであり、身体に痛みを与える行為
・心理的虐待 暴言を吐いたり存在を否定したり、嫌がらせを行うといった精神的に苦痛を与える行為
・経済的虐待 本人の同意を得ることなく財産を管理し経済的に拘束する行為
・性的虐待 本人の同意を得ることなく性的行為を行ったり強要したりする行為
・介護、世話の放棄 介護を必要とする高齢者を放置し、必要なサービスを受けさせなかったり介護を行わなかったりという行為
身体的虐待があったかについては、体に新しい傷やあざができていることで客観的に判断しやすいですが、心理的虐待は虐待を受けた高齢者が抱え込むことが多いため発覚するまで時間がかかることもあります。
そもそも介護施設で虐待が起きてしまうのはなぜか?と考えたとき、施設内の職場環境が悪化していることが背景にあるようです。
想像を超える激務で介護スタッフに対する心身負担は大きく、重なる疲労で正常な判断ができなくなったり、イライラする気持ちを自分より立場の弱い利用者にぶつけてしまったりといったことが考えられます。
さらに介護施設は慢性的な人手不足の状態のため、十分な教育を受けることができていない介護スタッフが多いこともその理由といえるでしょう。
働きやすいといえない職場環境の中、介護スタッフの不満は蓄積されるようになり、その矛先が弱い立場の利用者に向けられてしまうという流れです。
もちろん不満があるからといって虐待が許されるわけではありませんので、介護施設内で起きる目に見えにくい虐待を防ぐ対策が必要です。
介護スタッフ同士で、どのようなことが虐待となるのか、利用者が安心して日々を過ごすことができる環境整備には何が必要か、常に話し合い虐待を防ぐ活動を行うようにしましょう。