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福祉事業における病毒伝播リスクのある疾病への扱いとは?就業禁止の事例を紹介

2025.10.15
分類:総務

福祉事業において、ウイルス感染している恐れのある職員に、労働安全衛生法に基づく病者の就業禁止の措置を講ずることはできるのでしょうか。

 インフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症は、社内で感染拡大するリスクが高いため、適切な措置が必要とも考えられます。

 そこで、福祉事業における病毒伝ぱリスクのある疾病への扱いについて、就業禁止の事例を紹介します。

就業禁止への扱い

 労働安全衛生法第68条では、伝染性の疾病またはその他の疾病で、厚生労働省令で定める疾病にかかった労働者は就業を禁止しなければならないと規定があります。

 また、労働安全衛生規則611項にも、終業禁止に関する対象となる労働者を、以下のとおり定めています。

 ・病毒伝播の恐れがある伝染性の疾病にかかった労働者

・心臓・腎臓・肺等の疾病で労働のための病勢が著しく増悪する恐れがある疾病にかかった労働者

・前各号に準ずる疾病で厚生労働大臣の定める疾病にかかった労働者

 ただし、病毒伝播の恐れがある伝染性の疾病にかかった労働者について、伝染予防の措置を行った場合には、就業禁止の措置は不要です。

 なお、伝染予防の措置は平成12年の通達において、ツベルクリン皮内反応陽性者のみに接する業務に就かせることとされています。

  

 ウイルス等感染症の場合の扱い

 ウイルス等感染症の場合には、病毒伝播のおそれがある伝染性疾病にかかった労働者の解釈が重要といえます。

 平成12年の通達では、伝染させるおそれが著しいと認められる結核にかかっている労働者が就業禁止の措置の対象とされていました。

 そのため、結核以外の感染症は、労働安全衛生法の就業禁止の措置の対象にはならないと解釈できます。

 また、伝染させる恐れが著しいと認められる結核が対象となることや、すでにかかっていれば、対象になる点に留意してください。

 伝染させる恐れが著しいわけではない結核にかかっている場合や、伝染させる恐れが著しいと認められる結核にかかっているかもしれないケースでは、就業禁止の措置の対象にならないということです。

 就業禁止は、やむを得ない場合の措置であり、労働者の疾病の種類・程度・産業医の意見などを総合的に踏まえた上で判断されます。

 配置転換や作業時間短縮などの措置を講じて、就業の機会を奪わないことも大切です。

 以上を十分に考慮しつつ、慎重に判断すべきといえるため、安易に就業禁止措置としないようにしてください。