
打切補償とは、業務上のケガ等で休業している従業員が、治療を始めて3年経っても完治しない場合、平均賃金の1200日分を支払えば以降の補償義務を免れることができる制度です。
労働基準法第81条に定められている制度であり、長期にわたる補償負担から解放され、対象の従業員の解雇が可能となります。
ただし、打切補償の支払いには一定の負担が伴うため注意も必要です。
そこで、打切補償について、注意点と解雇する場合の退職金の扱いを解説します。
打切補償とは、業務上のケガや病気で療養中の労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷または疾病が治らない場合において、療養補償の代わりに平均賃金1200日分を支払うことです。
業務中や通勤中のケガや病気は、労災保険の療養補償給付で治療を受ければ、原則、本人が費用を負担する必要はありません。
症状が固定する治癒まで、治療を受けることもできます。
業務災害で長期的に療養している労働者は、療養の休業期間とその後30日間は解雇できないなど、制限されます。
しかし、労働災害で療養開始し、3年経っても治らないときは、会社から労働者へ1200日分の平均賃金を支払うことにより、この解雇制限は解除となります。
打切補償を支払うことで、本来は解雇が制限される労働者の解雇が可能になり、長期に渡る継続的な負担を軽減できます。
打切補償は、支払えば労働者をそのまま解雇できるわけではない点に注意しましょう。
復職の可能性があるにもかかわらず、合理的な理由のない解雇は、たとえ打切補償によるものでも無効になる恐れがあります。
長期で療養している労働者は、仕事をしながら療養を継続する場合もあれば、退職するケースも見られます。
そのため、一定額の打切補償を支払えば、どのような場合でも療養中の労働者を解雇できるわけではないと認識しておくべきです。
打切補償を支払って解雇する場合でも、退職金の支払いは必要になると考えられます。
ただし、退職金制度のある会社等に限ります。
退職金は、在職中の功績に対する労い、または賃金の後払いの制度です。
打切補償と退職金制度は別の制度であるため、別途、どちらも支払いが必要といえます。
また、打切補償で解雇するでも、通常の解雇と同じく30日前までに解雇予告が必要です。
解雇予告をせずに解雇した場合、平均賃金30日分の解雇予告手当を支払わなければならないため、注意しましょう。