介護や福祉の施設を売却するケースはけっして少なくないといえますが、現場の人材不足などで事業継続が難しくなっているなどの課題が解消できないからです。
また、事業承継などの問題もあり、後継者候補が見つからず、廃業せざるを得ないケースも見られます。
事業譲渡でノウハウを継続することで、施設自体はなくならず、利用者や職員が行き場を失うことはなくなるともいえますが、メリットもあれば注意しなければならないこともあります。
そこで、介護・福祉施設の売却について、増加傾向にある理由やメリットと注意点を解説します。
介護や福祉の施設、老人ホームなどの売却が増えてる理由として、2000年代に民間企業のサービス提供など業界規模が拡大したことが挙げられます。
異業種などが介護業界へ新規参入するようになり、施設運営も競争が激化しています。
利用者に選ばれる施設になるため、競合との差別化を図ることが必要といえますが、現場の人手が足りていないことや十分な資金がないために、事業継続を断念せざるを得ないケースも見られます。
施設介護はもともと福祉として公的機関が担っていた分野であったのに、民間企業によるサービス提供で業界規模が拡大したため、それに伴う事業譲渡などの件数が増えたといえます。
介護や福祉の施設を売却することは、悪いことばかりではありません。
他社の手に渡るマイナスのイメージはあるものの、大手グループが買主であれば、ブランド力を活用した事業成長を図ることができます。
介護保険制度の開始前後に設立した老人ホームの場合、経営者の引退時期で後継者候補が見つからないケースも少なくありません。
この場合、施設売却を検討することで事業承継の可能性は大きく広がり、継続させる事業も買い手のブランド力で拡大できる可能性があります。
施設売却の事業を引き継ぎにおいて、現経営者が退職する場合は注意が必要です。
小規模の事業所では、施設内の決まりごとや取引先との交渉、人材採用などを経営者がすべて対応しているケースは多いといえます。
この場合、経営者が施設売却と同時に退職してしまえば、買い手の事業引き継ぎが難しく、現場が回らない恐れもあります。
そのため施設売却の準備として、時間をかけてマニュアル化など明確な仕組みづくりを行い、当面の間は経営者が施設に残って引き継ぎ支援を行うことも必要といえます。