福祉事業におけるリスク分散とは、一つの事業に依存せずに、複数の事業の展開や多様化を図り、安定性を高めることです。
特定の事業の業績が悪化しても、他事業でカバーできるため、事業全体の安定性確保につながります。
限りのある経営資源(ひと・もの・かね)を有効活用するためには、分散ではなく集中を選ぶべきタイミングもあるといえます。
しかし、集中と分散はどちらも一長一短があり、どちらが有利かは市場の動きを確認しつつ、舵を切ることが求められます。
そこで、福祉事業におけるリスク分散について、集中との違いを簡単に紹介します。
「分散」とは、複数の事業に経営資源を分けることです。
たとえば本業で培った技術を基本として、他の分野への進出を目指すことや、主力商品の季節変動を緩和させるなどの商品企画が挙げられます。
特定の事業に傾注した場合に景気変動を受ければ、集中度合いが低い競合他社より深刻な業績ダメージを受ける恐れもあるため、分散が必要です。
また、季節によって生産量などが大きく左右されれば、安定操業できずに収益性は悪化します。
景気変動の大きい事業の補完に向けて、景気変動の少ない複数の事業と組み合わせた事業の企画や、季節変動での経営の振れを抑える各季節の事業の組み合わせなどを行いましょう。
「集中」とは、一定の事業に経営資源を集中することです。
たとえば、多角化後に本業回帰することや、複数事業で戦略に基づいた本業回帰・本業特化・戦略分野集中などの事業仕分けが挙げられます。
事業におけるリスク分散と集中は、異なる方法で事業の安定性と成長を目指す戦略といえます。
分散は複数事業や市場への投資であるため、一定の事業や市場のリスクの影響を受けにくくなります。
特定の資産が大きく上昇したときには、恩恵を十分に受けることはできません。
さらに分散は、複数の投資対象を選ぶ手間やコストがかかる場合もあります。
反対に集中は、特定事業や市場へ資源を集中させるため、専門性を高めて優位性を獲得できます。
ただし、特定の事業に傾注すれば、景気変動の影響で深刻なダメージを受ける恐れもあります。
いずれも事業戦略の重要な要素となるため、安定性と成長を高める上では必要不可欠です。
戦略のメリットとデメリットを理解した上で、状況に合った策を選択することが必要といえます。