新型コロナウイルスにより発令された緊急事態宣言。解除した後に新規感染者数が増え、再度発令されるのでは…と介護施設などでも不安が高まっていることでしょう。
しかし、第1波と呼ばれた時期とは異なり、医療体制も整いつつあるのはPCR検査数が2月・3月より5倍以上に増えていることも理由といえます。
数か月前よりもPCR検査を受けることのできるハードルは下がり、唾液などでも簡単に検査可能となりました。もし新規感染が疑われる場合には、PCR検査を受けたほうがよいといえますが、介護施設の場合はどうでしょう。
医療や福祉の現場など、高齢者と接することの多い職種などでは、すべてのスタッフがPCR検査を定期的に受けたほうがよいと考える方もいるようです。
しかし介護施設などで、本当に誰でもPCR検査を受けることができる環境にしたほうがよいのでしょうか。
PCRとは「Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応))の頭文字を省略した名称であり、DNAサンプルから特定領域を数百万から数十億倍まで増幅させる手法を指しています。
検体の中に1個でも新型コロナウイルスと同じ配列のRNAがあれば、陽性と判定される仕組みです。
ただPCR検査は精度がそれほど高いわけではなく、正しく陽性と判定される割合である感度は70%前後、感染していない場合に正しく陰性と判定される割合である特異度は99%とされています。
しっかり検体が取れていない場合や、口内を綿棒などで拭ったときウイルスがそこにいなかったなどで判定ミスが起きることも考えられます。
採取技術により、検体がうまく取れなかったということもあるでしょう。また、感染力のないウイルスの死骸なども検出してしまうことも考えられます。
もし陽性と診断されても陰性の場合もあれば、反対に陰性だったとしても安心できないということになります。
陽性と出れば周囲にうつさないように人と接触することを完全に避け、隔離されることになるでしょう。
しかし陰性と出た場合、感染に対する予防措置などが疎かになる可能性もあります。
そして本当は感染してしないのに、PCR検査で陽性と出てしまったことで隔離・入院となり、社会復帰できるまでかなりの時間がかかってしまいます。
介護施設で働くスタッフがそのような状況になれば、介護施設に対する被害は大きくなり現場は回らなくなるでしょう。それだけでなく、風評被害で事業そのものを続けることも難しくなる可能性があります。
もちろんリスク管理は大切ですし、新規感染が疑われる場合にはPCR検査で確認することは重要なことですが、定期的に検査をすべてのスタッフに行うという考えが正しいこととは言えないのです。