介護施設では、労働災害が発生しないように様々な取り組みや対策を講じているところでしょうが、比較的キャリアの短い方が労働災害に遭うケースが多く見られます。
特に労働災害として挙げられるのが腰痛と転倒で、動作の反動や無理な動作で腰を痛めてしまうこと、転んでケガをするといったことが少なくありません。
中央労働災害防止協会が公表している、平成25~30年に発生した社会福祉施設での労働災害を確認すると、その約7割が「動作の反動・無理な動作」と「転倒」によるものです。
どちらも全体の3割以上を占めており、発生件数も増加傾向にあるため注意が必要といえるでしょう。
動作の反動や無理な動作で腰を痛めてしまうケースでは、たとえば利用者を移乗の際に持ち上げる姿勢が関係しています。
前かがみや中腰の姿勢、ひねりを加えるといった、普段行うことのない不自然な姿勢が腰に負荷をかけ痛めてしまう原因となるようです。
そのため、利用者の介助を行う時には利用者の状態や福祉用具の有無、作業を行う場所の広さや配置などを踏まえた上で作業標準の策定が必要といえます。
利用者によって維持できている機能には違いがあるため、立位や座位などどこまで可能か確認しておくようにしましょう。
利用者を抱きかかえるときに腰部に負担がかかるため、残存機能に応じて利用可能な福祉用具などの準備も必要です。
利用者の立ち上がり介助や入浴介助など、介助する際に支えきれなくなり転倒し、ケガを負うといったケースも少なくありません。
そのため浴室内など滑りやすい場所には手すりはもちろんのこと、リフトやシャワーチェアなども設置しておくことが必要です。
必要に応じて入浴ベルトなども市用し、1人が利用者を抱え、もう1人が洗うといった協力体制も整えていきましょう。利用者の残存機能に合わせて、複数のスタッフが介助を行うなど、1人にかかる負担を軽減させることが大切です。
また、利用者が自分で姿勢を保持できるのなら、適正な姿勢を保つことができるように利用者に対する指導も必要になります。
介護施設で労働災害の発生を防ぐためには、介護スタッフに安全衛生教育を実施し、それぞれが自分の安全と健康を守る意識を高めることも必要です。
腰痛や転倒以外にも、感染症やストレス、体調不良といった労働災害が発生していますので、雇用時に適切な安全衛生教育を実施するようにしてください。