介護施設など事業所を運営する上で気になるのは、現場で働く職員が問題を起こしてしまったときです。
企業秩序を維持するためには解雇など懲戒処分など対処することも必要となりますが、具体的にどのようなときにその対象になるのかご説明します。
介護施設で働く職員が問題を起こすケースにもいろいろあり、たとえば遅刻や無断欠席を繰り返し行う場合や、職員本人に能力が不足しており介護サービスを十分に提供できないケース、規律違反を繰り返したり利用者やその家族とたびたびトラブルを起こしたりという場合もあります。
さらに利用者に対する虐待や犯罪行為など、発生した問題の態様や内容で処分は異なってくるでしょう。
解雇事由に該当する行為があった場合でも即解雇は可能ではありません。
解雇することに対し客観的に見て合理的だと判断できること、社会通念上相当と認めなければ解雇は無効になります。
そのため合理的と判断できるのか確認するため、
・労働者の労務提供不能や労働能力、適格性の欠如・喪失
・労働者の規律違反行為
・経営上必要に基づいた理由
などを検討しましょう。
たとえば遅刻や無断欠席などを繰り返す職員がいる場合には、その理由や回数、頻度などを確認した上で、事業全体に及ぼす影響の大きさや改善を促していたかなどを考慮し解雇相当か判断します。
職員の能力が不足している場合も、事業所がスタッフ教育・指導を適切に行っていたか、今後改善される可能性や他の業務に配置転換できないかなどを踏まえ、事業全体に対する影響も考慮し検討することが求められます。
普通解雇と違って、使用者の懲戒権の行使し行う解雇です。
懲戒権を行使するには懲戒の理由となる事由と懲戒の種類を周知されておかなければなりません。懲戒の理由となる事由や懲戒の種類、その程度は就業規則などに明記しておきましょう。
就業規則などに懲戒可能とする旨が記載されていなければ懲戒することはできなくなりますし、規定があっても職員の行為が就業規則などの懲戒事由に記載されていなければその行為を理由に懲戒はできなくなります。
さらに懲戒権を行使する場合にも、行為が客観的に合理的な理由を欠いており、社会通念上相当であることが認められなければ無効となります。
介護施設などで虐待行為があったときなどは事業の中核に影響する行為と判断できるため、虐待内容の程度や虐待になると認識していたのか、これまでも同様の行為があったかなど考慮しながら懲戒解雇の可否を判断しましょう。
解雇が認められるハードルは高いため、問題のある職員の解雇を考えるのなら自主退職を促すことも選択できます。
ただし退職勧奨は自らが辞めるように促すものなので、強制されたと受け取られてしまうと紛争になる可能性があるため慎重に行うことが必要です。