要介護状態の高齢者が入居する施設のうち、特別養護老人ホームは社会福祉法人や地方自治体が運営しているため、重い介護状態の方が多いといえます。
そのため特別養護老人ホームの利用者は、日常生活で必要となる基本的な動作ができないことも多く、介護スタッフがどれほど注意していても事故が起きてしまうこともあります。
仮に特別養護老人ホームで事故が起きてしまい、利用者が死亡してしまったときには、その責任を施設やスタッフが負うことになるのか解説していきます。
特別養護老人ホームで働く介護スタッフの故意・過失によって事故が起き、利用者が死亡したときには、そのスタッフは民法上の損害賠償責任を負うことになります。
過失による利用者の死亡では、刑事上の責任として業務上過失致死罪に問われる可能性もあるため十分に注意してください。
注意義務違反にもとづく過失の有無が裁判で争われることもありますが、注意義務違反の有無は事故が起きることの予見可能性や、結果回避可能性があることを前提とします。
事故の予見可能性については、個別に具体的に検討が必要となり、難しい判断となるでしょう。
なお、事故が起きたときに刑事上の責任が問われる可能性があれば、現場では萎縮してしまう介護スタッフが出てしまうことは問題といえます。
介護施設にも施設契約に付随する義務として、利用者に対する安全配慮義務を負います。
できるかぎり事故を起こさないような防止措置を取らなければならず、事故が起きたときには迅速に治療を行うといった対応が求められます。
介護施設が安全配慮義務に違反したときには、債務不履行とし損害賠償責任を負うことになります。
さらに行政上の責任を負う可能性もあり、適切な運営ができていなかったのなら、指導・勧告・公表・命令・指定取り消しなどの処分を受けてしまうと留意しておきましょう。
介護施設で利用者が死亡してしまうといった重大な事故が発生したときには、速やかに市町村に「事故報告書」の提出が必要です。
市町村や都道県知事から文書などの提出を求められることや、事故内容を詳しく質問するすることもあるため、適切に対応するようにしましょう。
なお、提出する事故報告書は、介護スタッフや介護施設が責任を負うことになるか判断する証拠となるため、嘘偽りなく記載するようにしてください。