2019年12月に厚生労働省が公表した特別養護老人ホームなどの介護施設に入所希望しながらまだ入所できていない要介護3以上の待機者数は、2019年4月1日時点で全国約29.2万人という数です。
現在の入居状況を確認し、入所を希望して待機するということが一般的ですが、そもそも特別養護老人ホームは要介護度3以上の方を対象としていますが、例外的に要介護1や2の方で特例入所を必要としている方も別途3.4万人いるようです。
このままではいつまでも入居状況は変わらず、待機したまま入所できない状態が続いてしまうことが危惧されている状況といえます。
特別養護老人ホームへの入所を希望しながら入所できず、待機するしかない状況に陥っている高齢者は全国約32.6万人います。
そもそも特別養護老人ホームとは介護保険の中でも比較的重度の介護サービスを提供する施設であり、24時間体制で日常介助を行ってもらえる介護施設として人気が高いことが特徴です。
ただ、前の年に比べると特別養護老人ホームの待機者は微減しており、その理由としていろいろな高齢者向けの住まいや介護施設が増えたことが関係しているのではないかとも考えられています。
また、医療機関などで一定の医療ケアを受けていた要介護者が特別養護老人ホームに入所する割合が高くなっている傾向もその理由かもしれません。
介護施設数の増加で介護業界内の競争が活発化したことが、特別養護老人ホームの待機者を減少させたと考える見方ははたして正しいのでしょうか。
現在、全国で必要とされている特別養護老人ホームは、計画段階で約6万床です。しかし、2015年度から2017年度の3年間では約4万5,000床しか整備できておらず、計画の7割程度にとどまっている状況です。
整備が追い付いていない1万5,000床分、37都道府県で不足している状況であり、必要とする床数から見たときには今後さらに整備されることが望まれる状態といえるでしょう。
この特別養護老人ホームの整備が進んでいない理由として、首都圏を中心とした単身高齢者の増加が関係しており、低所得者層が拡大したことで経済的に入所できない高齢者が増加していることなども理由として考えられています。
国や自治体の予算の関係上、整備が進まなかったり介護報酬が見直されたり、そして深刻化している介護業界の人手不足により介護施設を作ってはたして採算があるのかといった部分が影響しているのでしょう。
今後高齢者はますます増えることが予想されていますので、待機者をどうやってゼロに近づけるのか、介護業界や国が一緒になって取り組んでいかなければならない問題といえます。