介護施設を利用する方にとって、突然閉鎖になったら行くあてを失ってしまうという大きな問題が起きてしまいます。
初期費用や一時金など、多額の資金も支払ったのに、もし介護施設の経営状況が悪化し倒産してしまったら…。そのような不安を利用者やその家族に与えることのない経営が大切です。
2019年1月、関東エリアで37か所という老人ホームを運営していた「未来設計」が民事再生法の適用を申請したのはまだ記憶に新しいところかもしれません。負債総額54億円という、過去に有料老人ホームを経営していて倒産した会社では2番目という規模でした。
問題なのはこの負債の中に、利用者から入所の際に一旦預かったお金も含まれていることで、それが約34億円とおおくを占めていたことです。
この未来設計は経営状況が悪化していた赤字経営だったのに、前オーナーのもと粉飾決算が行われていたことが倒産につながったとされています。
ただ、社会福祉法人のグループ会社である創生事業団が経営を引き継いだことで入所者も退去せずにすんだそうですが、仮に退去することになったときに預けたお金が全額戻ってくるのかといえばそうではない可能性もあります。
他にも経営状況が悪化したことにより、老人ホームに住んでいた入所者が退去しなければならなくなったケースはあります。
何とか事業を続けようと、介護支援専門員の勤務実態を偽装するなど無理な経営を続けた結果、負債を増やし人件費や水道光熱費なども支払うことができなくなるといった状況に陥るのです。
早朝や夜間の人材が常に不足した状態で、介護スタッフの高齢化も深刻化している状況とう場合、改善させたくても人材を確保し育成する資金がなければどうにもなりません。
大手なら資金力があるので人材確保もそれほど難しい問題ではないでしょうが、中小規模の介護施設の場合、人手不足の問題を解消しにくくなっています。
現在、介護現場ではサービスの質が求められているのに対し、人材にお金をかけることができない中小の介護施設では、サービスの質も向上できずますます経営状況が悪化してしまうという負の連鎖に陥りやすいのです。
十分な資金力がない中小の介護施設では人のやりくりが難しく、経営環境は今後ますます厳しくなることが予測されます。この問題をどのように解決すればよいのか、国の対応に注目するべきといえるでしょう。