高齢化が進む日本では、家族信託などの方法で資産管理するケースも増えています。
通常と異なる資産管理の方法であり、まだ広く認知されていないため、どのように手続するのか知らない方も少なくありません。
そこで、福祉事業者も理解しておきたい高齢者の資産管理について、成年後見制度や家族信託・商事信託などを紹介します。
介護で資産を管理する方法は、以下のとおりです。
・預金口座の情報を共有する
・通帳・キャッシュカードを預かる
・代理人登録または代理人カード発行を検討する
・成年後見制度を利用する
・家族信託を活用する
・財産管理委任契約や任意後見契約を締結する
・預り金で自分名義口座で管理する
「成年後見制度」とは、高齢・認知症・精神障害などの影響により、財産管理が難しい方の利用できる制度です。
家庭裁判所に申立て、成年後見人を選任してもらうことで財産管理を任せることができます。
なお、成年後見人になるのは家族ではなく、第三者や専門家などが多いといえるでしょう。
「家族信託」とは、信頼できる家族に財産管理・運用・処分を託す民事信託の制度です。
認知症などで資産凍結を防ぐ対策であり、意思能力が認められる間に財産管理を託しておけば、認知症発症後にも財産を有効活用できます。
たとえば財産を所有している親が委託者・受益者となって、子などを受託者に指定することが多いですが、所有権は財産から利益を受ける財産権と、財産を管理運用処分できる権利に分けて処分権のみ子に渡します。
この手続により、子は信託された財産を管理・運用・処分できるようになります。
「商事信託」とは、信託銀行や信託会社が営利目的で資産の管理・運用を行う金融サービスです。
特徴として、まず受託者となるのは内閣総理大臣の免許または登録を受けている信託会社や信託銀行であり、信託報酬が発生します。
信託銀行を選ぶときには、一定額以上の金銭が対象ですが、信託会社では金融資産や収益不動産も対象になるものの、自宅不動産や非上場株式などは対象にはなりません。
商事信託と似た制度に民事信託があります。
民事信託は、判断能力のある方が信頼できる親族に財産管理を託す家族信託のことであるため、受託者・対象財産・目的などに違いがあるといえます。