介護福祉事業情報ラボNursing care work Information Lab

介護施設での介護から在宅介護を推進してきたイタリアで医療崩壊が起きた理由とは?

2020.07.20
分類:その他

日本のような介護保険といった制度のないイタリアでは、高齢者の95%は自宅に住み、介護施設など老人ホームを利用しているのはわずか5%の方です。

イタリアは介護サービスなどをケアとして提供するのではなく、現金給付という考え方が主流であるため、介護を必要とする高齢者には1980年代から介添手当が支給されています。

今回、新型コロナウイルスの影響により、多くの方が亡くなり医療崩壊が起きてしまったイタリアは、この在宅介護が関係しているのではないかとも考えられているようです。

イタリアの介護に対する考え方

イタリアでの高齢者に対する介護とは、家族で行う出産、育児、疾患、失業といったライフサイクルでの位置づけであり、介護を行うのは家族という考えです。

しかし実際には、女性も社会に進出するようになり高齢者も急増していることから、家族が介護を行うことは難しい状況となっています。ただ、認知症を患う高齢者の85%は自宅で生活しているので、見守り続けなければならない家族の疲弊も問題視されている状況です。

すべての高齢者が家族と生活しているわけではなく、独居の高齢者も増えつつあります。たとえばミラノでは高齢者27万人のち約3分の1の方がひとりで生活しており、そのうちの3分の1の方は家で孤独死という形で亡くなっているとされているようです。

命を守ることが大前提

ローマ・カトリックが9割以上を占めているイタリアでは、命を守ることが大前提とされ、終末期に行う点滴の使用や、延命のため薬物の使用や治療は欧米よりも多く行われています。

しかし延命措置を受ける側に苦痛を与え、その状態を長引かせてしまうこともあるので、延命治療そのものが課題として取り上げられることもあるようです。

日本では施設介護がメインですが、イタリアでは在宅が中心となっています。在宅が中心でありながらも、介護の労働力は外国人人材に頼っているので、介護の専門知識を持たない外国人スタッフに介護を任せることへの問題も指摘されています。

 

適切な介護や医療を受けていない高齢者が医療機関に殺到した結果?

在宅での介護が95%という割合だとしたら、新型コロナウイルスに対して最も脆弱な層が施設を介することなく、そのまま医療機関に殺到してしまいます。

実際、イタリアでは新型コロナウイルスの影響で多くの方が亡くなっていますが、懸念されていたことが現実に起きてしまった可能性も否定できないと考えられるでしょう。

施設介護から在宅介護へシフトすることを推進してきた欧米先進国では、今回の新型コロナウイルスの影響で医療崩壊が進んでしまいました。しかし台湾などは施設介護を維持していたので、医療崩壊にまで至っていません。

抵抗力の弱い高齢者にとって、介護施設という調整役は必要であり、医療崩壊を防ぐ防波堤の役割を担う大切な存在と証明されたともいえるでしょう。