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介護施設で働くスタッフの処遇改善で2025年度末の介護人材不足は解消される?

2020.11.19
分類:その他

介護施設は今、現場で働く介護人材が不足しているという大きな問題を抱えています。

超長寿社会を迎える日本で、この介護人材をどうやって確保するのかについて、国も課題として取り上げ様々な取り組みを行っているところです。

その1つが介護職員に対する処遇改善などですが、2025年度末には約34万人不足するといわれています。

国が実施している施策とは?

国は介護人材を確保する対策として、介護職員の処遇改善だけでなく介護福祉士を目指す学生の修学資金貸付を実施していますし、現在でも介護ロボットやIoTICTを現場で活用することを推進するなど様々な取り組みを実施しています。

201910月1日からはリーダー級の介護職員の賃金を向上させることを目的として、「特定処遇改善加算」が始まりました。

介護施設が加算を受けるのなら、経験や技能を持った介護職員のうち、最低1人以上は月額平均8万円の賃金引き上げ、もしくは年収440万円まで賃金を引き上げることが必要です。

それにより、知識や技能、経験を積んで介護福祉士を目指す方も増え、介護現場の人材不足も解消されるのでは?と考えたのでしょう。

どのくらいの効果があったのか

しかしこの制度は、職員の職種の構成割合が法人ごとに異なっているため、今の賃金配分方法は事業所側に裁量を持たせています。そのため事業者の判断で介護福祉士の賃金に対する上げ幅を変えることが可能という状況です。

それより本来なら月額平均8万円は賃金が上がるはずだったものが、平均約2万円程度の上昇にとどまっているとされています。

大手のほうが有利な制度?

さらに問題なのは、この制度は経験値の高い介護人材を確保しやすい介護事業所が有利な仕組みになっていることです。規模が大きな介護事業所のほうが、経験や技能が高いベテランといえる介護人材を獲得しやすいため、小規模の介護事業所から大手に介護スタッフが流出する可能性も否定できません。

まだ始まって1年程度の制度のため、今後どのくらい特別処遇改善加算が介護人材を増やすことに影響するのか期待したいところでしょう。しかし不発に終わってしまった場合、介護施設に長年勤めたとしても賃金は結局上がらないと介護スタッフのモチベーションを下げることになり、不満を感じて離職者が増加してしまう可能性もあります。

 

今後人材不足解消の策は生まれるのか

介護業界は事業所同士で人材を獲得しようとする競争が激化しており、限られた人材の取り合いも起きています。そのため離職率が高い上に、新たに雇用することが難しい問題は解決できていないといえるでしょう。