介護施設で生活する利用者の中には、所得が低く不安を抱える方もいます。そのような低所得の高齢者に対して、所得補償ともいえる補助金である補足給付が縮小されてしまうと、ますます老後生活に不安を感じる高齢者が増えることになってしまうでしょう。
しかし厚生労働省は、この補足給付の対象者を縮小しようとしていますので、所得補償がされなくなった高齢者にとって厳しい状況となっています。
そもそも補足給付とは、所得の低い高齢者を対象として、介護施設で発生する居住費や食費などを補助する制度のことです。
しかし介護保険制度を今後も存続させていかなければならない状況の中、介護保険給付や負担などの見直しを厚生労働省は検討しています。
その中であがったのが、補足給付の厳格化と見直しです。
補足給付で補助される介護施設の居住費や食費は、もともと介護保険の給付対象でした。しかし在宅介護の方と公平さを保つため、2005年度に改正された介護保険法により除外し、低所得の高齢者(住民税が非課税の高齢者)などが介護施設に入所している場合、補足給付で補填できる仕組みを作ったといえます。
それが2014年の改正で厳格なルールを定め、補足給付の対象者は縮小されることとなり、たとえ住民税非課税であっても預貯金が一定額以上あるケースや、配偶者に一定以上の年収があれば対象に含まないことに変更されています。
その上、さらに対象者が縮小されることになってしまうようです。
補足給付は介護施設に入所している住民税非課税の高齢者が対象ですが、具体的には次の4つのケースが対象です。
・生活保護受給者や老齢福祉年金の受給者
・市町村民税世帯非課税で本人の所得と年金収入の合計が80万円以下の方
・市町村民税世帯非課税で利用者負担が上記以外の方
・上記のどの段階にも該当しない方
低所得者向けのセーフティネットとして設けられている制度が補足給付ですが、本来機能するべきはずなのに対象者が縮小されてしまうと、介護を必要とする高齢者の老後生活を破綻に追い込むリスクも高くなると考えられます。
すでに2014年に補足給付の受給条件が厳格化されたことで、配偶者と離婚し対象者となろうとする方が出てくるなど、制度を縮小すること自体が問題に発展することを助長しているともいええるでしょう。
今後、さらに対象者が縮小されれば、同様の問題が発生する可能性も否定できないと考えられます。