介護施設を運営しているのは、主に中小零細企業などが多いですが、それが介護業界は人材不足といわれる大きな原因のひとつになっているといえます。
中小零細企業の場合、介護施設で働くスタッフに対し、適切なキャリアパスを用意することができません。そのため、途中で辞めてしまう介護スタッフが多くなってしまうのが人手不足を慢性化させているといえます。
政府は2019年10月から、介護保険サービスの報酬の引き上げを行い、経験値の高い介護スタッフの給与を向上させるため処遇改善策をスタートさせました。
これは人手不足が深刻化している介護施設などの状況を改善させることを目的としており、介護スタッフが現場で長く働くことができるようにするためです。
そして大手企業ではこの改善策に伴い、独自で様々な対策を打ち出しました。
たとえば介護業界大手のSOMPOケアなどでは、年間10億円を拠出し介護職リーダーの給与は年間で最大80万円引き上げを目指すとしています。さらにベネッセスタイルケアでも勤続10年以上の介護スタッフのうち、8割以上の方の年収を500万円以上にするようです。
介護スタッフとして働く人材は限られており、獲得しようと大手でも競争が激化していることをあらわしています。大手は求人募集する上でも有利な条件を出すことが可能なため、人材獲得に有利となるでしょう。
しかし中小零細企業の場合、余裕がないため求人に苦戦してしまいます。そのため、人材確保の頼みの綱はコストの高い紹介・派遣会社になっているのが現状といえます。
2020年1~9月に倒産した老人福祉・介護事業は94件ですが、新型コロナ関連破たんは3件にとどまっています。
しかし計画を立てておらず経営が未熟な放漫経営を要因とするものは17件あり、新型コロナ感染が拡大するよりも前から経営不振が深刻化していた事業者は、コロナ禍による追い打ちがかかったといえるでしょう。
そして3密を作ってしまいやすい通所・短期入所介護事業や訪問介護事業などにもその影響は及び、いずれも中小零細企業などが大半を占めています。
なお、2020年1~8月に休廃業・解散した老人福祉・介護事業の事業者は313件で、倒産と休廃業・解散による市場撤退はかなり増加している状況です。
国なども緊急融資や給付金などで、新型コロナ支援策を行っています。それらを活用し、介護事業を継続する中小零細企業・事業者は少なくありません。
しかしその一方で、先行きの見通しが立たないと休廃業や解散という決断をする介護事業者も増えています。
今後はコロナ禍の支援による効果が薄れ、さらに老人福祉・介護事業が倒産していくことが危惧される状況です。