新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年の「老人福祉・介護事業」の倒産件数は過去最多を更新しました。
相次ぐ介護事業者の倒産により、様々な介護事業でもこのまま続けていくことができるのか…と不安を煽ることになっているようですが、それほどコロナ禍による事業継続は困難だったといえます。
まだ事態の収束がいつになるかわからない状況の中で、どのような介護事業者が倒産に至ってしまったのかを把握し、事業継続に向けて何をするべきか改めて確認しておきましょう。
2020年1月8日に東京商工リサーチが公表した2020年「老人福祉・介護事業」の倒産状況ですが、この調査結果によると2020年1月から12月の老人福祉・介護事業の倒産件数は118件だったようです。
この件数は、介護保険法施行となった2000年以降、過去最多を更新する結果となっています。
過去最多とされていた2017年と2019年でも111件でしたが、やはり新型コロナウイルス感染拡大による影響は否定できないといえます。
多くの介護事業者が、国や自治体の給付金なども活用し、金融機関から融資を受け資金繰りをつないできたはずです。
確かに介護事業者に対する臨時特例などの効果により、新型コロナ関連倒産とされ件数は7件ですが、実際にはかなり深刻な状況に追い込んだといえます。
2020年に倒産してしまった介護事業所のうち、深刻なヘルパー不足による影響を受けた訪問介護事業は56件という数で最も多くなりました。
次に多かったのは利用者の獲得競争の激しい「通所・短期入所介護事業」の38件です。次に「有料老人ホーム」が10件、「その他」14件という結果でした。
負債1億円未満の倒産件数は94件で、従業員5人未満の倒産は79件であり、主に小・零細事業者が多く倒産していることが確認できます。
負債総額は前年比減の140億1,300万円でしたが、これは小・零細事業者の倒産が多かったことの他、2019年は有料老人ホームの事業者が負債53億8,600万円で民事再生法適用を申請していたなど大型倒産の反動も影響しています。
利用者や介護保険からの給付は、老人福祉・介護事業では増えているはずです。
しかし利用者は増えても介護サービスを提供する人材が足りたおらず、慢性的な人手不足や事業者同士の競争激化など様々な経営課題を抱えています。
そのような厳しい状況に加え、新型コロナの影響で感染防止対策強化など費用負担は大きくなり、さらに老人福祉・介護事業者を苦しめている要因になっているといえます。