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介護事業者が知っておきたい家族信託による高齢者の資産管理

2021.10.14
分類:その他

高齢化が進む日本では、家族信託という資産管理の制度が注目されるようになっています。

まだ広く認知されていない資産管理の方法ですが、介護事業者も知っておきたい家族信託とはどのような制度なのかご説明します。

家族信託による資産管理とは

家族信託とは、高齢者の目的や意思に基づき、保有する資産管理・運用・処分をすることです。

もし認知症などになってしまったとき、自らで保有する資産の管理ができなくなったときに備え、財産の処分や管理をできる権限を与えておく方法といえます。

相続対策では遺言書を残すといった方法で、いずれ他界したときの財産の行く末を決めることはできます。

しかし認知症や突然の脳梗塞などで認知機能や判断力が低下してしまったとき、保有する資産は凍結され勝手に資産を処分することはできなくなってしまいます。

判断能力が十分でない高齢者の資産管理や処分をどうするかという問題のみなら、成年後見制度の任意後見制度の利用は可能です。

任意後見制度では、判断能力が十分でない高齢者に代わり、後見人が契約を結んだり資産管理・処分を行うことが可能なので、家族信託でなくても任意後見制度で問題ないでしょう。

ただ、任意後見制度では高齢者が生存中しか利用できず、高齢者の判断能力が低下してからの利用となります。

しかし家族信託なら、高齢者が生きている間でも亡くなった後でも利用でき、信託契約を結んだ時点で受託者が資産管理・運用が可能となります。

 

家族信託による資産管理のメリット・デメリット

家族信託のメリットとして、

・高齢や病気により判断能力が衰えたときに備え、資産管理を任せ詐欺などから防衛できる

・委託者が受託者の資産管理・運用を確認できる

・裁判所に報告義務はなく、資産の運用・管理が簡単

・遺言書作成より簡単で遺言書ではできないことも可能となる

・信託財産は差し押さえられないという倒産隔離機能がある

・事業を営んでいる場合において、株式評価が低いときには贈与税を抑えた事業承継が可能となる

・相続資産の二次相続を指定できる(遺言書では一次相続者の指定まで)

などが挙げられます。

ただしデメリットとして、

・受託者が決まらない可能性がある

・委託者の資産が受託者の名義に変更されることに抵抗感が生じることもある

・適切に身上監護ができない

・未成年後見人指定や子の認知、養子縁組、婚姻、離婚など身分の取得・変動・消滅などの法律行為はできない

・受益者は資産を取得したものとして課税されるため税の負担が重くなる

・遺留分減殺請求の対象になる可能性は出てくる

といったことは留意しておいてください。