新型コロナウイルス感染拡大で、外国人観光客によるインバウンド需要を見込んでいた観光業や飲食業などは厳しい状況が続いています。
コロナ禍を抜けた後も税金増税など、様々な圧力が高まることも予想されますが、海外からの供給網であるサプライチェーンが遮断されることによる影響も関係してくるでしょう。
介護事業者でも今後どのような状況になるのか不安を抱えることはあるでしょうが、介護事業は労働集約型の国内限定産業のため、その影響はどれほど大きくないと考えられます。
ただし注意しておきたいのは、福祉用具貸与事業の場合です。
福祉用具の貸与を事業とする場合、国内の福祉用具メーカーのほとんどは主に中国など海外に製造を委託しています。
そのため為替レートによっては、今後、貸与用の福祉用具の仕入価格が高騰することも考えられ、さらに国内在庫が不足する可能性もあります。
福祉用具の貸与価格を値上げできれば問題ないでしょうが、価格を引き上げれば販売数が減るなど、実際には厳しいと考えられるでしょう。
さらに2018年度介護報酬改定では、福祉用具の上限価格が導入されています。これにより、上位16%程度を超える貸与価格は介護保険の対象から外れてしまいます。
その結果、福祉用具の貸与価格を値上げすることは難しい状況です。
どれぐらい平均貸与価格が下がったのか、厚生労働省が公表している内容によると、福祉用具の上限価格を導入したことで、2018年10月実績分では4億5千万円強の介護費適正化につながったとされています。
2018年度の介護報酬改定により、平均貸与価格は低下しており、実際に「福祉用具貸与価格の適正化に関する調査研究事業」でも約7割の福祉用具貸与事業者が収益減少という回答しています。
そしてコロナショックにより、売上や経費はそのままで原価だけは上がってしまうと、収益はさらに減少してしまうことが考えられます。
2019年度には上限価格の見直しはなく、2020年度には新商品だけが対象となりました。
旧来商品の上限価格の見直しがなければ価格は下がらないだけで、仕入価格が上昇すれば平均貸与価格が上がっても上限価格は上がらないということになります。
新商品を導入し全体の粗利益を確保したくても、その新商品に上限価格が設定されてしまえば、利益確保そのものが制約を受けることになってしまい、福祉用具貸与事業の経営環境はとても厳しい状況になってしまうと考えられます。