身体の床目に接する部分の外周で作られる領域のことを「支持基底面」といいますが、介護においてはこの「支持基底面」を広く保ち、重心線を中心に近くすれば安定しやすいとされています。
介護現場で「移動」をサポートする「移乗」などの介助は身体介護の1つですが、介護技術「ボディメカニクス」ではこの「支持基底面」を広く保つことをすすめています。
そこで、「支持基底面」を広くする「ボディメカニクス」による介護の考え方について説明していきます。
介護の「ボディメカニクス」とは、身体の動きのメカニズムである力学を活用した介護技術であり、活用することで介助される方の抱える不安や苦痛を軽減させ、介助者の腰痛予防や身体負担を軽減することもできます。
ボディメカニクスの8原則として次のことが挙げられます。
「支持基底面」とは、足裏など床と接する部分で囲まれた足下の面積を指しています。
介助者が足幅を前後・左右に広めに開くことにより、立位姿勢を安定させることができます。
介助される側とする側の身体の重心を近づけることにより、移動の方向性がぶれることなく一方向へと働くため、少しの力で大きな力を生み介助しやすくなります。
腕や手先だけでなく、足や腰など筋肉の大きな場所も意識して介助を行うことで、1つの筋肉にかかる負担を最小限に抑え、大きな力で介助することができるようになります。
介助される方に腕を胸の前で組んでもらい、膝を曲げることで、身体をできるかぎり球体に近づけることができます。
身体を小さくまとめることは、ベッドなどに接する面を小さくすることになるため、力の分散を防ぎ介助しやすくなるといえるでしょう。
介助者が膝を曲げて腰を落とせば重心を低く保つことができますが、それにより、姿勢が安定し腰にかかる負荷を抑えることができます。
足先を移動する方向に向け、介助者の膝の屈伸を利用しながら重心移動で動かすことにより、円滑な移動が可能となります。
身体をねじってしまうと重心が不安定になるだけでなく、腰痛の原因になりかねません。
そこで、介助者の足先を動作の方向に向けておくことにより、身体をねじることなく姿勢を安定させやすくなります。
ベッド上で身体を左右に移動させるときには、押すのではなく手前に引くように意識し、移動させましょう。
作用点・支点・力点の3点を利用することで、力をかけず重いものでも動かすことが可能となります。介助者の肘や膝などを支点とし、介助するようにしましょう。