建設工事業界の展望として近年注目されていたのは、2020年に予定されていた東京五輪開催決定による鉄道網や高速道などのインフラ整備の加速でしょう。
しかし2019年をピークとして建設工事の市場は縮小となり、量から質に需要も転換されていくようになりました。
さらに2020年に感染拡大した新型コロナウイルスの影響による打撃など、建設業界は今苦境に立たされている状況です。
ただ自体が収束し、今後海外進出などビジネスチャンスに乗り出すことを検討するなら、世界マネーを扱うことになるリスクについても留意しておくことが必要となるでしょう。
そこで建設業界の動向と、海外建設事業のリスクについてご説明します。
日本の建設業界の戦後の海外進出は、東南アジア各国への賠償工事として1954年に始まりました。
そこから1970年代に中東のオイルマネーによる建設需要の高まりによる恩恵を受けることとなり、1980年代以降になると発展途上国に対して計画されたODA拡大によりアジア海外を中心とした受注拡大という流れとなります。
アジアの世界マネー危機などで一旦は落ち込みを見せるものの、ドバイなど大型工事の受注を2007年に受けています。
しかし翌年にはリーマンショックで受注金額が大幅に減少してしまいますが、東南アジアで地下鉄建設など世界でも日本の建設は役立っているといえるでしょう。
海外での建設事業は大きなビジネスチャンスとなる反面で、政治経済の状況や取引慣行などが日本と異なり、世界マネーを扱う点でもリスクを伴うこととなります。
主にどのようなリスクがあるかというと、現地事情に伴って発生する為替リスクやカントリーリスク、事業関連に伴って発生する現地国の法律・税制・各種規制によるリスク、工事関連に伴う施工能力の違いや追加工事支払いのリスクなどです。
現地通貨の為替レートが変動することに伴って発生するリスクです。
発注者や下請けに対しての請負契約が現地国通貨建取引の場合には、現地通貨の為替レートが変動することによって工事損益も変わる可能性が出てきます。
政治や経済の情勢によって現地国の状況に起因してしまうのがカントリーリスクです。
法制度が整備されていない新興諸国に参入する場合には、突然法制度が変更されることもあれば規制が敷かれることも考えられます。
さらにテロや内乱や戦争などで工事を中断しなければならなくなれば、貸し倒れになってしまうリスクも伴います。
対象となる国特有の事情に基づいた法律や税制、規制が存在するものです。新しく海外に進出するときには、日本と異なる法律や税制、規制のリスクを理解しておくことが必要といえるでしょう。
海外は施工技術が未熟なことが多く、工事を手直しやそもそも遅れが生じたりなどの理由で、追加工事が必要となればコストの負担が大きくなります。
さらに下請けの信頼関係が築けず、不測のトラブルなどが発生する可能性も否定できません。
このように海外工事では国内ではないトラブルが発生することがあるため、その点を考慮した上で乗り出すことが必要といえるでしょう。