建設工事現場で働いている方の中には、労働者を雇用せず自身と家族などのみで事業を行っている事業主である一人親方もいます。
ただこの一人親方の所得は、事業所得と給与所得のどちらに該当するのかよくわからないという場合もあるでしょう。
そこで、事業所得と給与所得についてその内容や判断の基準についてご説明します。
一人親方の場合、本人単独または親族などだけで事業を営むこととなるため、所得は事業所得に該当することとなります。
事業所得とは、自営業など事業を営む方が事業により得た所得であり、売上から経費などを差し引いた部分のことです。
建設工事など請負契約で得た対価は事業所得であり、確定申告によって所得税を納めることになります。
給与所得は雇用契約に基づき発生した所得のことで、建設会社に雇用されている従業員などが給料として賃金を受け取っている場合は給与所得に該当します。
給与所得の方は、事業主が毎月の給料から所得税を源泉徴収し、年末調整により正しく納める金額を再度計算しますので確定申告は必要ありません。
建設業者に対しては社会保険未加入者への指導が厳しくなっていますが、社会保険に加入したけれど保険料の負担が大きいと感じているケースも少なくないようです。
そのため、雇用している従業員を一人親方として独立させ、請負契約という形で対応しようとする建設業者もあるようです。
しかしこの場合は、形式として請負契約を締結しているだけですので、一人親方として認められません。
実態は労働者として扱われる雇用契約なのでれば、表向きは一人親方としていてもその方が受け取るのは給与所得です。
外注費として処理をしていたものの、給与として支払うべき費用だと判断されれば、源泉所得税を徴収していなかったと指摘されることになり延滞税など発生する可能性もあります。
雇用契約と請負契約のどちらか判断が難しい場合には、形式と実態、それぞれの要件に基づいて税務署が判断することになるでしょう。
もし建設業者から作業時間が指定されている場合や、報酬が時間単位で計算されており時間的な拘束を受けている場合には雇用契約として判断されます。
また、発注元である建設業者から、作業について具体的な内容や方法を指揮監督・命令されている場合にも同様です。
材料や用具などを供与している場合にも雇用契約として判断されると認識しておいてください。
なお、一人親方が事業主として認められる上での形式的な基準としては、事業者として反復・継続・独立し事業を営んでいることが前提です。
さらに、国民健康保険・国民年金に加入中で、開業届の提出・確定申告・適切な請負契約書の作成なども必要となります。
請け負った仕事について他人から指示を受けず、その方自らの責任で完成させることができるという点も判断の基準となるでしょう。