建設業界は人手不足が深刻化していますが、重層下請け構造が背景にあると考えられます。
規模の大きな工事案件を受注するのは大手ゼネコンで、そこから下請け業者に発注されます。下請け業者からさらに孫請け業者にというように、3次請けや4次請けなど下に行けば行くほど利益は低くなってしまうことが特徴です。
格差社会が叫ばれる中、建設業界もこの重層下請け構造により収入に格差が発生しているといえるでしょう。
国は予算を削減するため公共工事の単価を下げてきましたが、そのしわ寄せを受けるのも重層下請け構造での末端業者です。
適切とは言えない条件の中、立場が弱いことで引き受けるしかないという状況も生まれています。
もし断ってしまえば、仕事もなくなりますしその後、依頼してもらえなくなるかもしれないという不安から引き受けてしまうのでしょう。
収入が少ない中で工事を行うことになれば、工事現場の作業員に支払う賃金も低く抑えることが必要となってしまいます。
労働に見合わない賃金しか支払ってもらえないという悪条件に耐え切れない作業員は、すぐに辞めてしまうことになるでしょう。
新しく人材を採用したくても人が集まらず、事業を継続できなくなる業者も増えることになってしまいます。
建設業界の平均年収をみたとき、大手ゼネコンと中小で大きな差があります。
賃金格差だけでなく、労働時間の長さや出勤日数の多さなども人材不足の原因となっているといえるでしょう。
20~30代の若い世代の働き手が減少し、今建設業界を支えているのは多くが55歳以上の世代です。
5~10年経てば、今建設業界を支えている世代はリタイアし、さらに人手不足は深刻さを増すことになるでしょう。
このままでは生き残ることができないと考えた中小の建設業者は、建設業だけでなく新事業に進出することも検討し始めています。
会社として副業を行い、建設業界では重層下請け構造で弱い立場であるものの、新たな道を見つけスタートさせているのです。
たとえば鉄道関連の塗装を行う業者がマンションのリニューアル事業を始めたり、総合建設から介護事業へ転換したりという会社もあります。
生き抜くため創意工夫を行うことは、社会や経済状況の変化に左右されてもどうやって生きぬくべきか考えることと同じです。建設業界で生き抜くためのヒントを見つけることにつながる可能性もあります。