建設工事の発注方式にはいろいろあり、建物の用途や発注者側の体制などで変わってきます。
その中でも代表的な発注方式といえるのは、「設計・施工分離方式」と「設計・施工一括方式」です。
それぞれどのような違いがあるのか、そして近年採用されるようになった方式についてご説明します。
設計・施工分離方式による発注方式とは、設計者の作成した設計図書に従って建設会社が施工を担当する方式です。
設計者が監理を担当するため、品質確認をしっかり行うことが可能となる反面、発注者は設計者・施工者のそれぞれとやり取りが必要になるなど手間がかかります。
そして設計・施工一括方式とは、発注者の調整業務を軽減できる反面、発注者からは設定される金額の根拠がわかりにくいことがデメリットです。
そこで、最近では発注方式として「性能発注型の設計・施工一括方式」が多く採用されています。
この性能発注型の設計・施工一括方式では、建設会社の技術提案の自由度を残しつつ建設コストや工期を早期に確定できることがメリットです。
性能発注型とは、発注者が求める品質・コスト・竣工時期の実現に向けて、発注条件を整理し建設会社を選ぶ方式となっています。
建物の形状や設備仕様、材料まで決めず、まずは建物や設備がどのような能力を発揮するべきか性能から条件を設定することが大きな特徴といえます。
性能から条件を決めることで、かかる費用や工期が、事前の計画と大きくズレることを防ぐことが可能です。
設計・施工分離方式では、設計図書が発注条件となる仕様発注なので、設計者が作成した実施設計図と仕様書を基準として建設会社に発注します。
発注者は実施設計完成と建設会社選定まで、建設費や工期の見通しなどが予測しにくい点がデメリットといえるでしょう。
そして従来の設計・施工一括方式の場合には、用途・規模・コストなどから段階的に設計の精度を上げていきます。その一方、性能発注型では建設会社選定前の基本的な計画や設計段階で、コストに関係する条件や性能を決めます。
技術的な専門知識が必要となる発注方式であり、最近では公共工事で採用されるケースも増えつつあるようです。
これまでは建設の発注は建設会社に依頼すればよいだけだったものが、だんだんと建設技術が高度化し、情報も多様化しているため複雑になっています。
そのため、採用する発注方式によりかかる費用や品質、工程まで影響するようになったといえるでしょう。