消費税率が引き上げられたのに際して、消費税転嫁を阻害する行為を是正し、円滑・適正な転嫁を確保するために、平成25年10月1日からは「消費税転嫁対策特別措置法」が施行されています。
建設業でも消費税は無視できない問題ですが、具体的にどのような内容となっているのかご紹介します。
法律で禁止される行為として、次のようなことが決められています。
・消費税の転嫁拒否等の行為
①減額・買いたたき
②商品購入、役務利用または利益提供の要請
③本体価格での交渉の拒否
④報復行為
・消費税の転嫁を阻害する表示
①取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示
②取引の相手方が負担すべき消費税に相当する額の全部または一部を対価の額から減ずる旨の表示であって消費税との関連を明示しているもの
③消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示であって②に掲げる表示に準ずるもの
国土交通省でも、建設業界の消費税転嫁について様々な対策を講じていますが、主に次のような取り決めがされています。
消費税はどの時点で課税されるのか疑問を感じる方もいるでしょうが、契約日ではなく「引渡し日」時点の税率が適用されます。
国内取引に係る消費税の納税義務は、課税資産を譲渡したときに成立するため、請負契約の場合は原則、
・物の引渡しを要するものは、目的物のすべてを完成し相手に引き渡した日
・物の引渡しを要しないものは、約した役務のすべての提供を完了した日
となります。
契約日が消費税率の引き上げ前でも、引き渡しが適用日以後なら引き上げ後の消費税率が適用されるということです。
消費税は原則、元請契約に係る消費税額から、下請発注に係る消費税額を差し引いた金額が納付税額になります。消費税が適正に転嫁されていれば、適用税率の違いで元請業者の損益には影響を与えません。
建設業界では、請負契約という建設工事の特性により、発注者との関係で立場的に弱くなりがちです。
たとえば消費税増税分を値引きするように求められやすいなど、税負担を発注者に転嫁できない状況も発生してしまうことが懸念されます。
しかし消費税は消費一般に公平に課税する間接税なので、税額分は価格に上乗せされることとなり、最終的には消費者が納めなければなりません。
消費税率の引上げに際し、消費税の仕組みを正しく理解して発注者の理解を得ながら円滑・適正に転嫁することが大切です。
建設業でも発注者との元請契約・下請契約、資材購入といった取引段階で消費税が課税されます。契約や購入などで自己の取引における優位性を不当利用せず、消費税分は適正に上乗せした契約締結が重要といえるでしょう。