これまでは個人として設計事務所の代表として事業を営んでいたものの、会社を設立しようとするときには、役員報酬をどのように定めればよいのか迷うものです。
役員報酬で適切とされる金額は、設計事務所の規模や状況などにより変わるため一概にはいえませんが、設定を間違えれば税金を多く支払うことになります。
そこで、設計事務所が設定する役員報酬の適切な金額の目安や、基本的なルールなどについてご説明します。
設計事務所の役員報酬は、基本的なルールに従い決めることが必要となります。
仮に決められたルールを守らなければ、経費として計上することができなくなってしまうため、必ず守るようにしてください。
税務上、役員報酬の支払い方は決まっていますが、比較的小規模な設計事務所が採用することの多い定期同額給与に基づいた決め方をご説明します。
この場合には、
・役員報酬は定額であることが必要
・役員報酬は決算日から3か月以内に決めることが必要
・売上に連動した賞与の支給は実質的に困難
という3点に注意が必要です。
従業員に対して支払う給料や賞与は、年度の途中でも自由に変更できます。
しかし役員報酬は年度の初めに金額を決めると、その年度はその金額で支払い続けることが必要です。
売上の見通しを十分に予測しにくい期の初めに決めなければならないため、役員報酬の金額を大きく設定すれば赤字になる可能性もあり、反対に小さい金額で設定しすぎてしまうと手元にお金が残らなくなり、法人税額を増やすこともあります。
設計事務所の役員報酬や従業員の給料を適切に決めるには、限界利益という考え方をまず理解しましょう。
設計事務所の限界利益は、売上から設備・外注費・確認申請料の預かり金などを除いた金額です。
その限界利益の40%程度に人件費を抑えることが必要となるため、人件費の2.5~3倍は稼がなければなりません。
設計事務所の場合、労働集約型と呼ばれる仕入れのないシンプルなビジネス形態ですが、人件費が占める割合が大きくなるため、役員報酬や従業員の給料、生産性を改善させることを実践すれば手元に残すことができる金額も増えるはずです。
会社を立ち上げ、経営を安定させていくのなら、適正な金額で役員報酬など設定することが必要と認識しておきましょう。