建設工事業情報ラボConstruction Business Information Lab

土木工事会社などが頭を抱える働き方改革による技術者の将来

2020.09.03
分類:総務

20194月から施行となった働き方改革関連法で、建設工事を請け負う企業なども時間外労働の上限規制や年次有給休暇取得の義務化などに対応しなければならない時がせまってきました。

時間外労働は原則月45時間・年360時間となり、年次有給休暇は年5日取得が義務化され、さらに正規・非正規労働者間の不合理な待遇差は禁止するといった内容です。

2024年4月に建設業を含めすべての職種に適用となりますが、実際にはその後、本当に作業に支障をきたすことはないのかと不安を抱える建設業の経営者も少なくありません。

時間に縛られ品質低下や技術者の成長鈍化を招かないか

特に土木技術者などは、一人前の技術者を育てにくい環境となるのでは?という不安の声もあがっているようです。

土木業界では大手が先行しながら業務効率化・休暇取得・社内での手続き簡素化(電子化)など、自主努力で働き方改革を進めていました。

それにより総労働時間を短縮させることに成功している企業もありますが、それが働き方改革関連法の施行により時間外労働上限など法令にかわったのです。

それによってさらに長時間労働を削減できるとはいえ、従来のような臨機応変な対応がしにくくなり、例えば作業や確認を簡略化させてしまうことで品質の低下や技術者の成長の鈍化が進むのでは…と不安視されていることもあります。

技術者に求められる能力は変わらない?

特に土木業界のように、技術者や職人など経験がモノを言う部分もあるので、一人前と呼ばれるようになるまで手や脳がいろいろな経験を積み重ねることが必要です。

一人前になることに遅れが生じれば、資格の取得も遅くなり、それにより収入も増えなくなるでしょう。

今はIT技術やロボットを活用する動きも進んでいますが、それにより技術者が習得しなければならないレベルも抑えられるわけではありません。

時間をかけ、丁寧に作業することが必要な業界であるからこそ、労働時間や日数に法的な制限がかかってしまうことに懸念を示す声もあるようです。

 

ワークライフバランス実現のために

仕事と生活の調和を示すことを、「ワークライフバランス」といいます。やりがいを感じ充実した状態で働きながら仕事での責任を果たし、日常生活における人生の段階に応じた多様な生き方を選ぶことを実現させる社会のことです。

仕事と人生を敵対関係と考えるのではなく、互いに響き合い、高め合う関係にすることが必要といえます。

働き方改革を進めていくことは必要なことでしょうが、技術者や職人にとっては法的にしばるのではなく、生き方の設計や改革の中で会社と相談しながら決めていく形のほうが適しているとも考えられます。