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建設業務の派遣はなぜ労働者派遣法で禁止されているのか

2021.07.02
分類:総務

建設業務とは、建築工事現場での土木・建築・その他工作物の建設・改造・保存・修理・変更・破壊・解体の作業・これら準備作業に係る業務のことを指しています。

建設業務に主として従事する労働者のことであり、左管・大工・鉄筋工・配管工など、建設工事現場で現場作業に従事する労働者のことであり、技術者・設計・経理・営業などに従事する労働者は含まれません。

その建設業務の派遣については、労働者派遣法で禁止されていますが、それはなぜなのかご説明します。

建設業全体を守るために禁止

建設業務の派遣は労働者派遣法により禁止されていますが、その理由は建設業全体を守るためです。

建設業界は独自の重層的な下請関係が基本となっており、建設労働者の雇用の改善などに関する法律で、労働者を雇用する者と指揮命令する者が一致する請負になるよう雇用関係を明確化させ雇用管理・改善を図る措置が講じられています。

そこに労働者派遣事業など、新たな労働力を送り込む仕組みを採用してしまうと、建設労働者の雇用が改善されるどころか悪影響を及ぼすことになってしまうと考えられるからです。

建設業務は、専門・分業化された複数の企業が協力しながら1つの工事を完成させることが常態化しており、それぞれが専門分野で働くことで効率的に工事できることがメリットでもあります。

ただ、複数の企業が工事現場に混在することになり、工事遂行や指揮命令の責任者が曖昧になりやすく、労働災害のリスクが高い中で曖昧な指揮系統では事故を招く可能性が高くなってしまいます。

労働者の保護が今よりも疎かにならないためにも、派遣労働者の採用で工事遂行や指揮命令をさらに複雑化させるわけにはいかないといえるでしょう。

 

労働の安定を確保するためにも重要なこと

建設工事の期間もいろいろで、1年を超える工事も中にはありますが、季節や天候などにも左右されやすくどのくらい労働力が必要かを正確に予測できません。

工事のときには多くの人材が必要でも、完了後は不要になるなど、建設労働者の雇用は不安定になりがちです。

そのため、建設業では労働者と使用者の雇用関係を明確化させ、長く安心して働くことのできる環境整備が必要といえます。

しかし派遣労働者の場合、雇用主とは別の事業主から受けた指揮・命令により働くことになるため、そもそも責任の所在が曖昧になりやすい工事現場でさらに曖昧さを大きくさせてしまいます。

そもそも派遣切りという言葉どおり、有期雇用の派遣社員は雇用も不安定になりがちなため、建設業務では派遣を禁止しているといえます。