建設業で働く方の中には、作業によって手首に負担がかかり、腱鞘炎になってしまうこともあります。
腱鞘炎の治療を受けながら仕事を続けることはとてもつらいことですが、より症状が悪化し手術などが必要になると費用負担も大きくなります。
仕事で腱鞘炎になったのでれば、当然労災認定されるものと考えるものですが実際どうなのでしょうか。
腱鞘炎など、上肢障害を労災として認定する場合には、実際に仕事で腕・肩・手などを酷使したことによるものだと認められなければなりません。
上肢障害には腱鞘炎以外にも、手関節炎・手根管症候群・回外(内)筋症候群などが挙げられますが、いずれの場合でも労災認定されるためには次の要件を満たすことが必要です。
・上肢(頸部・後頭部・肩甲帯・上腕・前腕・手・指)に負担のかかる作業を主とした業務に相当期間従事し、その後発症した場合
・発症前に過重な業務に就労した場合
・過重な業務・就労と発症までの経過が医学上妥当と認められる場合
それぞれの要件について詳しく説明します。
要件に含まれる「負担のかかる作業」とは、
・上肢を反復させる動作が多い作業(運搬や積み降ろし作業など)
・上肢を上げた状態で行う作業(電気設備・空調設備工事・塗装・溶接作業などの作業)
・頸部や肩を動かすことが少ない状態で、一定の姿勢が拘束される作業
・上肢などの特定部位に負担がかかる状態や姿勢で行う作業
などが考えられます。
上記の要件に含まれる「相当期間」とは、原則として6か月程度以上の期間を意味します。
ただし腱鞘炎の場合には、短期間で発症することもあるため、その症状や発症に至るまでの状況によっては6か月より短い期間でも労災として認定されることはあると考えられます。
上記の要件に含まれる「過重な業務」とは、次のいずれかに該当するケースです。
・同一事業場・同種の労働者と比べ10%以上業務量が増えており、その状態が発症直前3か月程度に渡っているとき
・業務量は一定せず1か月平均では通常範囲とする場合でも、次の①または②に該当する状態が発症直前3か月程度続いているとき
①1日の業務量が通常の業務量より20%以上増えており、その状態が1か月で10日程度認められる
②1日の労働時間の3分の1程度に渡って業務量が通常の業務量より20%以上増えており、その状態が1か月で10日程度認められる
これらの業務量だけでなく、実際の状況なども考慮した上で判断されることになるでしょう。