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打切補償とは?休業後の制度利用で解雇が可能になる仕組みを簡単に解説

2025.05.28
分類:リスク

打切補償とは、業務上のケガや病気で休業中である従業員が、治療を開始し3年経過しても治療が終わらないとき、企業が従業員の平均賃金の1200日分を支払う制度です。

 会社独自の制度ではなく、労働基準法第81条に定められています。

 建設業は、業務上のケガや病気など、労災が起こりやすい業界です。

 事故によりケガの療養のため、休業することになった場合でも、治療開始から3年経っても治ゆしなければ、打切補償が行われてその後は解雇となる場合もあります。

 そこで、打切補償について、休業後の制度利用で解雇が可能になる仕組みを簡単に解説します。

打切補償とは

 打切補償とは、業務上のケガや病気で休業・治療をしているものの、治療開始から3年経過しても治療が終わらない場合に、従業員の平均賃金の1200日分を支払って補償終了とする制度です。

 従業員の業務上のケガや病気について、使用者は全治まで必要な療養補償を行う責任を負います。

 打切補償は、この療養補償に対し、使用者負担を軽減する趣旨で労働基準法81条に規定している免責措置です。

 療養開始から3年を経過後、ケガや病気が治らない場合に限って、使用者が従業員の平均賃金の1200日分の打切補償を支払うことを条件とし、それ以後の労働基準法に基づく補償責任を免れられます。

  

打切補償の仕組み

 労働基準法は、第8章で災害補償について定めています。

 使用者が補償責任履行を迅速・安定して行うために、事業者は労働者災害補償保険法(労災保険法)に基づき、労災保険へ加入しなければなりません。

 企業が負担する労災保険料の代わりに、国が補償の負担をまかないます。

 労働基準法に基づく災害補償を社会保険として行うことにより、従業員への療養補償などの支給を政府が肩代わりする仕組みといえます。

  

 打切補償により解雇が可能

 打切補償を行った場合、企業は以降の補償責任を免れます。

 それに加えて、労働基準法第19条の定める解雇制限も解除されるため、従業員の解雇が可能になります。

 ただし、打切補償の条件とされる従業員の平均賃金1200日分の支払いは、仮に11万円でも1200万円になるため、高額な負担が必要です。

 そのため、復帰が見込めない従業員の解雇のために、打切補償を行うケースはそれほど多くないでしょう。

 平均賃金1200日分を支払う代わりに、打切補償の支払いがあったとみなす「傷病補償年金への移行」の仕組みを活用するケースも少なくないようです。