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建設工事の目的物に発見された瑕疵の責任について

2021.07.11
分類:リスク

建設工事における目的物とは、新しく建築・設置・取付するときの「物」自体を指しています。

請負契約において、完成後に引き渡すことになる工事物件を指しており、請負契約がない工事であれば完成を目的とした工事物件のことといえます。

たとえば建物の建築工事を請け負ったときには、建築した建物そのものが目的物ということです。

では、建物の建築依頼を請け負い、完成させた後でその目的物に瑕疵が発見されたときには、工事にかかった代金の請求や受け取りができなくなるだけでなく、発覚した瑕疵に対する損害賠償責任を負うことになるでしょうか。

目的物の瑕疵は瑕疵担保責任を負う

建物など目的物を完成させ引き渡しが行った後、たとえば壁にひび割れが発生していたことが発覚したら、瑕疵と判断され代金を受け取ることができないのは大きな痛手です。

民法上、請負契約の報酬は、仕事の目的物の引き渡しと同時に支払いされることとされています。

引き渡しが必要でない契約であれば、完成によって代金の支払いが発生することになるでしょう。しかし目的物に瑕疵が認められたときには、瑕疵担保責任を負うことになります。

 

瑕疵が認められるケースとは

たとえば完成した目的物が、依頼された内容で完成できていなかった場合や、価値を低下させる欠点が見つかった場合、性質を欠くなど不完全な部分がある場合などが瑕疵とされます。

瑕疵と認められれば、瑕疵の修補と修補分の損害賠償金の支払いが必要となるため、代金の支払いと損害賠償金の支払いが同時に履行されてしまいます。

建物の建築工事の請負契約における瑕疵担保責任については、修補請求と損害賠償請求が発生することとなり、注文者は修補を請求するか、修補は不要でその費用を損害賠償請求するかを選ぶことができます。

瑕疵が代金よりも少額の場合や大掛かりな工事が必要な場合

目的物に発見された瑕疵が、支払ってもらう代金よりも著しく少額なケースにおいては、瑕疵を理由に代金を支払わないことは認められず信義則に反する行為とされるでしょう。

しかし瑕疵自体は軽微だとしても、修補には大掛かりな工事を必要とするという場合には、過分の費用が必要となってしまいます。

その場合、修補してもらうことを請求することもできず、修補分を損害賠償請求することもできないため、低下した価値分だけを賠償請求される可能性が高いといえるでしょう。