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建設工事現場で起きた労災事故!責任の所在はどこに?

2022.03.04
分類:リスク

建設現場では、発注された工事の種類や規模により、工事に関係する業者が複数存在します。

様々な業者が1つの現場に入場している状況で事故が起きてしまうと、責任の所在が複雑になってしまい、誰がどの責任を負うか曖昧になるリスクが高くなるでしょう。

労災事故は労災保険から補償を受けることができるものの、労災保険だけでは十分な補償にならないといもいえます。

そこで、労災事故に関し責任のある事業者に、損害賠償が請求されることもあるため、現場で起きたときの責任の所在はどうなるのか理解しておきましょう。

建設工事現場で起きた事故が労災認定される基準とは

労働災害とは、業務中や通勤中に発生した病気やケガであり、業務中の場合には「業務災害」、通勤中の場合は「通勤災害」といいます。

労災保険から補償を受けるためには、労働基準監督署に事故が労働災害であると認めてもらうことが必要です。

労働災害のうち、業務災害は労働関係から発生した災害であり、労働者が労働契約に基づき事業主の支配下で働いていたときに、業務を原因に起きた災害といえます。

業務災害が認定されるには、「業務遂行性」と「業務起因性」という2つの要素を満たさなければならないと考えられます。

業務遂行性

業務遂行性が認められるケースとは、労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にあったときです。

労働者と使用者との間で労働契約関係が締結されていることが必要であり、労働契約以外の業務委託契約関係なら要件を満たすことはできないともいえます。

業務起因性

業務起因性は、業務または業務行為を含め、労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にあることに伴って危険が現実化したと経験則上いえるときに認められます。

労働時間内や残業時間内に業務をしていてケガを負った場合などは、業務災害に該当するといえるでしょう。

 

建設現場で問われる安全配慮義務違反

建設現場では、複数の業者が1つの現場で働いているため、事故が発生したときの責任の所在が複雑になりやすいといえます。

しかし労働契約法では、使用者に安全配慮義務を課しており、建設現場などの危険な環境で仕事をさせるときは危険防止に必要な措置や安全対策を講じなければならないとされています。

仮に現場で転落災害や落下災害が起きたとき、下請業者の危険防止措置も不備があったのなら、安全配慮義務に違反した下請業者が損害賠償責任を負うことになるでしょう。

元請業者と下請業者の従業員との間には労働契約関係はないため、労働契約上の安全配慮義務を元請業者が負うことはありません。

しかし安全配慮義務は、直接の労働契約関係がない場合でも、信義則上認められることもある義務です。

元請業者と下請業者の従業員との間に特別な社会的接触関係があったと認められれば、元請業者は下請業者の従業員に信義則上安全配慮義務を負わなければならないと考えられます。