新型コロナウイルス感染症の影響により、建設業界では様々な工事においてパンデミックを想定したいろいろな見直しが求められています。
電気保安についてもパンデミックを想定し、保安人材の確保と業務を効率化させる両輪での見直しが進んでおり、電気主任技術者の外部委託制度やドローンなどを使ったスマート保安、さらに第1種電気工事士取得に必要な経験年数なども見直しの必要性が問われています。
電気保安について、検討課題としてスポットがあてられたのは電気主任技術者の外部委託契約受託制度です。
外部委託とは設備を所有する方が社外の有資格者に対して、自社の電気保安業務を代わりに行ってもらうように委託する制度です。高圧や低圧など、設備の規模に応じて実務経験が3~5年ある有資格者のみが、経済産業大臣の承認を経ることで認められます。
この実務経験年数を軽減させるべきという声もあり、特に電気保安の有資格者は高齢化が進んでいるため2030年には2千人不足することも予想されています。
実際に資格を保有している方や電気保安協会など法人に対し、高圧・低圧など設備規模に応じた経験年数の差について行ったアンケート結果でも、7割が不要とこたえています。研修受講などにより、1~3年短縮させることもできるはずと約8割が回答しているのです。
このアンケート結果も踏まえた上で、設備の規模に関係なく、研修受講と組み合わせながら一律になる方向性が示されています。
自然災害やパンデミックが発生したときに備えて、新しい電気保安のあり方を進めるための取り組みがスマート保安です。
既存の技術にプラスしてIoTやAIなどを活用し、今の管理レベルを維持させながら業務を高度化させる仕組みです。異常検知センサーなどを活用することによって、定期点検の効率化や点検頻度の見直しなどに期待が持たれています。
業務が効率化されれば、有資格者の業務量を増やすこともできますし、何よりも人材不足問題を解消する一手になるでしょう。
さらに特別高圧など大規模設備の保安を行うために必要な第1種電気工事士の資格取得についても、必要な実務経験年数5年という部分と、卒業学科による実務経験年数の差をなくすことに見直しが提案されています。
電気工学課など大学・高専の卒業者は経験年数3年でよいとされ、オンラインでの定期講習受講も認められています。しかし環境変化に伴って、時代に合った保安のあり方が問われているときなので、見直しが進められる可能性があると考えられます。