東京商工リサーチによると、東京五輪・パラリンピックや都市部の再開発により、長年好調を維持し続けた大手総合建設会社の風向きが変わりつつあり、株価も影響が及んでいるようです。
五輪関連工事終了と新型コロナウイルス感染拡大の影響で、大手ゼネコン4社の2021年3月期の連結売上高は、合計前期比7,482億円減となっており、これは2011年から10年ぶりの減収とされています。
2020年4~12月は、大手ゼネコン4社いずれも減収だったものの、官公庁工事に支えられた鹿島建設と清水建設の12月末の繰越工事高は微減だったようです。
しかし小・零細規模の建設業者の経営体力は奪われつつある状況で、建設業の新型コロナ関連破たんは今も増加傾向にあります。
ゼネコンの決算が悪化し株価も低下すれば、さらに倒産が増えていくことも考えられます。
国土交通省が公表している「建設工事受注動態統計調査」から、2020年1~12月を確認すると、工事受注高は79兆6,578億円(前年比7.0%減)となっていました。
元請受注は、発注者が公共機関であるケースは前年比5.7%増であり、民間のケースは11.6%減で、官公庁工事が支えている状況です。
鹿島建設の2020年4~12月の連結業績は売上高1兆3,889億円(前年同期比3.4%減)で、営業利益は1,004億円(18.4%増)となっており、土木・開発事業の売上総利益が増え唯一、増益確保できています。
しかしゼネコン4社は新型コロナの影響により民間投資が冷え込んだことで、建築工事部門が大きく落ち込んでいるものの、国土強靭化投資増加による官公庁工事が支える形で、建設市場が急激に縮小するリスクは回避されているといえるでしょう。
建設業倒産は新型コロナ支援による支援効果の残りで、一部は表面化されていないものの、実際にはコロナ禍による民間投資低下でゼネコン大手の官公庁頼りが長引けば、中堅・中小の建設業に影響が及んでいきます。
建設業界は、大手ゼネコンを頂点としたピラミッド型の重層下請構造となっており、全国に下請けや孫請けなどの中小・零細企業が散らばっています。
すでに建設業の新型コロナ破たんはだんだんと拡大傾向にあり、民間工事が減少したことで激化する官庁工事競合で行き詰まるといったケースも見られます。
今後はどのようにコロナ禍を凌いでいくのか、建設業の真価と力量が問われてくると考えられるでしょう。