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建設現場での事故の責任は誰に?

2016.09.20
分類:その他

例えば建設現場で下請業者がケガを負った場合、元請業者や発注者にはどのような責任がかかるのでしょう。

 

 

災害補償責任を負うのは?

労働基準法では、使用者は過失の有無に関係なく労災事故で被災した労働者の平均賃金を基に算定される一定額を補償することが義務づけられています。下請が被災した労働者を雇用している場合でも使用者は元請とみなされますので災害補償責任は元請が負うことになります。もしも被災した労働者に落ち度がある場合は、賠償額について過失相殺されます。

安全配慮義務違反の責任は?

元請と下請従業員間には契約がありません。原則被災した労働者の雇用主は下請業者ですので、下請業者が安全配慮義務を違反している場合には債務不履行責任もしくは不法行為責任を負うことになります。ただし実際の工事現場での実質的な下請従業員の指揮監督は元請業者ですので、下請従業員に対しても安全配慮義務を負う場合もあります。特に建設業は特定元方事業者として下請の安全に配慮しなければいけない傾向にあります。元請は地盤調査が不十分な場合や、土留め変位の監視不備、事故発生時の対応不備など、どれも安全配慮義務に違反したということで債務不履行もしくは不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。

刑事責任が課せられる場合も

元請が定められた労災防止措置を怠り労働安全衛生法に違反していた場合には、刑事責任が課され場合によっては現場代理人が業務上過失致死傷罪に問われる可能性もあります。

発注者の損害賠償責任

発注者は被災した労働者と雇用関係がありませんし現場作業員と指揮監督関係にもありません。しかし工事での災害発生の危険性が客観的に見ても具体的に明らかという場合には、元請業者などに監督員を通じて安全性確保のための指示を行う義務を負います。

労災保険に加入しているから安心ではない

元請は労災保険に加入しているから安心というわけではありません。労災給付以上に損害が生じた場合にはその分を負担することになるため、安全配慮義務を怠らないことが重要です。建設現場では労働安全衛生法令を遵守することは当然ですが、発注者の指示が不適切な場合には積極的に指摘して改善をしてもらうように求めていくべきと言えるでしょう。トラブルを未然に防止するため、そして自己防衛手段として大切なことです。

具体的な対策

例えば仮設工事の事故では地層や地盤面の高さをしっかり把握できていないこともありますので、発注者から工事図面を受け取った場合にはまず現場状況と照らし合わせることも大切です。CADで設計照査を行って地層状況を加筆するなど想定していなかった軟弱地盤層が出てきた場合にも対応できるようにしましょう。