建設工事費デフレーターの分析から確認できることとは?

建設工事費デフレーターとは、国内の建設工事全般を対象として、建設工事にかかる名目工事費を基準年度の実質額に変換することを目的に国土交通省が作成・公表している指標です。
建設工事のほとんどが現地一品生産であるため、一般的な製品の物価のように市場価格の動きからとらえにくい性質があると考えられます。
そこで、建設工事費を構成している資材費・労務費・サービス(運送・広告・金融)・小売商品などの価格指数を、それぞれの構成比の投入コスト型で算出しているため、どのくらいの費用が費やされているか確認できます。
資材はおよそ3割程度、残りはサービス(運送・広告・金融)が占め、小売商品は0.5%にも満たない割合です。
10年間で見た建設工事費デフレーターと物価指数の関係
2008年から2019年までの建設工事費デフレーターと企業向け物価指数を確認すると、2008年にはどちらも大きく上昇しています。
上昇の理由はリ―マンショックにあり、企業に販売される資材の価格が高騰したことが関係しているといえるでしょう。
3割程度を資材が占めている割合なので、物価が変動したことで建設工事費にも影響が及んだと考えることができます。
その10年後の2018年には、建設工事費デフレーターと賃金指数が大きく上下しており、これは需要が拡大しているのに人手が不足していることが関係していると考えられます。
人件費は建設工事費の半分程度を占めているため、人件費により建設工事費の相場が大きな変動を見せることを示しているといえるでしょう。
賃金指数と建設工事費デフレーターの関係と今後の予想
総務省統計局の「毎月勤労統計」による全産業と建設業の賃金指数の推移を見た場合でも、2018年以降の建設業の賃金指数は大きく上下しています。
産業計ではこの指数は横ばい状態であるのに対し、建設業は右肩上がりであることからも、人手が不足している影響が関係していることが伺えます。
建設業の人手不足は問題が深刻化しており、特に若い人材をどのように獲得していくかが課題となっていますが、賃金が上昇することにつながるのは悪いことではないと考えられます。
今後もインフラ整備など建設需要が低下するとは考えにくいため、賃金上昇とそれに伴った建設工事費の上昇が続くことが予想されます。
建設工事費デフレーターの変動は経済基準指数の指標といえるため、今後も注目していく必要があるでしょう。