2019年10月に消費税増税となり、消費者の買い物控えや新型コロナウイルスによる影響で物量の減少は事業者にとっても気になるところでしょう。
物流・運送業界ではここ数年、トラックドライバー不足の深刻化に悩まされている状況であり、トラック自体はあってもモノを運ぶことができない現象が起きています。
トラックはあってもドライバーがいなければ、輸送量そのものが伸びなくなってしまいます。
ドライバーに選ばれる会社になるため、働き方改革を受け入れ様々な改善を行っている事業者も少なくないことでしょう。運賃もその対象で、貨物量の減少により限られた荷物を取り合うこととなり、事業者同士が運賃の下げあいをしている状況です。
しかし消費税増税や新型コロナによる影響がある今だからこそ、下げ続けられた運賃を値上げするタイミングが訪れたともいえます。
物量はコロナ禍により大幅に減少する中で、2020年4月下旬に国土交通省は「標準的な運賃」を告示しました。
この「標準的な運賃」は、運賃の交渉において目標運賃として使用してもらいたいとするものです。
元請や直荷主と交渉の際、標準はどの程度の運賃なのか理解してもらうために使うことができます。
標準的な運賃を収受できれば、長年に渡り悩みのタネだった物流課題が解消される可能性もあります。
ただしどの運送事業者でもスムーズに交渉できると限らないため、実効性をもたらすには運送事業者が率先し交渉の場を確保することが必要となるでしょう。
「標準的な運賃」はドライバーの労働環境を改善することやドライバー不足を解消させることにつながるなど、トラック運送業界にとっては待望の施策といえます。
ただ、運送事業者の中には実情と標準的運賃に大きな差があると感じることもあるようです。
たとえば今の運賃と標準的運賃を比べたとき、その金額が半額程度であるなどあまりにも現実離れしていると感じるケースです。
荷主側に厳しい現状を理解してもらえず、運賃は下がるばかりで値上げすることは何十年もできていません。他にも運送会社はあるのだから…と考える荷主も少なくないようです。
標準的運賃はあくまでも目標・理想であり、表記されている運賃を収受することに現実性を感じないという運送事業者も少なくありません。
中には今設定している運賃は標準的運賃の半値程であり、標準的運賃通りに収受したくても荷主に要求できないと悩む事業者もいます。
業界全体・すべての運送会社が一丸となって標準的運賃への意識を高め、取り組まなければ思うように消費税増税や新型コロナのよる経済低迷の影響ばかりで、運賃値上げまで進まないと考えられるでしょう。