人やモノを運ぶ乗り物を製造する輸送機器業界。輸送機器のニーズは陸・海・空の領域に渡っていますが、自動車・鉄道・船舶・航空機という業界に分かれます。
その中でも自動車業界は国際的に見ても十分な競争力を保有している主力産業といえる反面、少子高齢化が進んでいることや若者の車離れなどが危惧されている状況です。
しかし電気自動車やハイブリッドカーなども積極的に導入されており、運送業界でも今後活用されていく可能性があります。
日本が世界に誇る巨大産業といえるのが自動車業界で、世界販売台数でも首位となるメーカーや複数の完成車メーカーがあります。
経済産業省が公表している統計調査でも、輸送用機械器具製造業は全体の2割を占めるなど、自動車をメインとする輸送用機械器具製造業は日本経済を支える基幹産業となっているといえます。
しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界各地の自動車工場は休止に追い込まれるといった打撃を受けてしまいました。
その後、少しずつ操業を再開し生産は回復しつつあるとされていましたが、2021年に入ってからは自動車製造で欠かせない半導体不足などの事態に陥り、業績への影響も懸念されています。
輸送機器関連で注目したいのは、自動車産業だけでなく造船業界も同じです。
高度な技術力に定評を持ち、世界トップクラスのシェアを誇ることもあったのが日本の造船重機メーカーといえます。
しかし円高や鋼材価格の高騰が急速に進み、ライバル国と激しい受注獲得競争などが影響して、現在ではトップの中国と大きく差がついてしまいました。
2019年の新造船の受注を見ても、国別の隻数は中国がトップで、日本は2位となっています。
しかし3位の韓国は総トンでは39.5%を占める割合で、隻数でトップの中国や2位の日本を上回る結果です。
さらに中国・韓国どちらも企業再編の動きなどでスケールメリットを活かす競争が加速していますが、日本国内でも業界1位の今治造船と2位のジャパンマリンユナイテッドが共同で出資して日本シップヤードを設立するといった再編の動きも見られます。
ただし人材確保という問題は解消されておらず、コスト削減と建造時間を短縮することを目的とした自動化システム導入などに乗り出す企業もあるようです。
このような状況に新型コロナウイルス感染拡大の影響が加わり、貿易拡大で世界的に拡大傾向にあったはずの造船市場は、貿易縮小に直面することとなってしまいました。
そもそも造船業界は受注から納品されるまでの工期は長期であり、将来の売上になる手持工事量は2年分以上必要ともいわれるほどです。
しかし現在は約1.05年分と大変厳しい状況が続いており、事業再編や生産性向上などで競争力基盤整備が求められています。