働き方改革を進めていく必要性は物流業界でも同じことですが、トラックドライバーなど自動車運転業務の時間外労働上限規制については年960時間(月平均80時間)以内とされています。
他産業では720時間なのに後退されており、別枠で扱われていることに、改善前と何も変わらない水準が維持され続けるといえるでしょう。
運送業界は5年の猶予が適用されていたため、2024年4月1日からはこの基準を守ることになりますが、トラックドライバーは過労死しても仕方がない業種とされているかと厳しい論調も出ているほどです。
トラックドライバーは960時間であるのに対し、倉庫作業員などドライバー以外の物流従事者は他産業同様に720時間の上限規制です。
月平均80時間が目安となるものの、1か月あたりの上限規制は設けられていませんので、繁忙期で月80時間を超えたとしても年間960時間を超えなければよいということになります。
物流は輸配送や入出荷など一連作業がつながっているため、ドライバーだけが長時間労働温存となると倉庫側にもそのしわ寄せがくることが予想されます。
仮に実態的にもやむを得ないと考えたとしても、上限規制は一律720時間にするべきだったのでは?という意見もあります。
もしトラックが延着した場合、荷受け側倉庫も労働時間が長くなってしまうでしょう。どちらも同じ物差しだったとしたら、互いに連携して時間短縮に向け生産性を向上させることに取り組むこともできるはずです。しかし目指す目標が異なることで、そのギャップを埋めることすら難しくなってしまいます。
ドライバー側の時間短縮が進まないと倉庫も同じように進めることが難しくなり、無理やり進めるのなら要員を増やすことで人件費を上昇させ、さらに省力機器投資など出費は避けることができなくなります。
費用が上がることを荷主も認めてくれるとは限らず、料金転嫁させることの難しさにも危機を感じてしまうところです。
運送業界だけでなく、現行規制の適用除外とされているのが建設業です。ただし5年間の猶予後は他産業同様に年間の残業時間上限は720時間となります。
建設業などは現場が都度ことなるのに現場作業員と事務作業員が同じ上限規制の適用となっています。それなのに物流だけがなぜバラバラになっているのか、物流やサプライチェーンの現場への視点が欠如していると批判する声もあるようです。