トラックなど長距離輸送などが多い物流・運送業界では、ドライバーの長時間労働が常態化しやすいといえます。
その中でも、労使協定を結んでいるのだから長時間労働になっても大丈夫と考えていると、国が定める労働時間の上限に違反することになってしまいます。
そこで、労使協定を結んでいる場合には現在、どのくらいなら労働時間を延長できるのか、今後はどうなるのか確認しておきましょう。
トラックドライバーなど自動車運転業務を行う労働者に、労働基準法32条で規定された法定労働時間を超えて働いてもらうなら、使用者と労働者で36協定という労使協定を結んでおくことが必要となります。
それにより、限度基準の範囲で労働時間を延長できるようになりますが、トラックドライバーの時間外労働の限度基準は決められていません。
しかし何時間でも労働時間を延長してよいわけではなく、厚生労働省の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準)」で労働時間の上限に定めがあることを忘れないようにしてください。
この改善基準では、ドライバーに対する休憩時間や手待ち時間などを含んだ拘束時間は、1か月原則293時間を上限とするとしています。
労使協定を結んだ場合には、1年で6か月まで拘束時間は最大360時間まで延長することは可能ですが、1年間の拘束時間合計は3516時間(293時間×12ヶ月)を超えてはいけません。
さらに1日で拘束できる時間は原則13時間までとされており、拘束時間と次の拘束時間の間で8時間以上の休憩時間を確保することで最大16時間までの延長は可能です。ただ拘束時間が15時間を超えることができるのは1週間で2回までとされていますので注意してください。
運送業の労働時間上限は現在改善基準に基づいた内容となりますが、2024年4月からは新しい上限規制が適用となります。
2019年4月に労働基準法が改正となり、使用者と従業員との間で合意し時間外労働を延長可能とする特別条項付き36協定の内容も変更されています。
時間外労働は年720時間が上限となっていますが、自動車運転業務は5年間の猶予期間が設けられたことで、2024年4月から適用されます。そして時間外労働の上限も月80時間、年960時間までに変わっています。
2024年4月にはドライバーの労働時間は法定労働時間+年960時間までを上限とすることとなりますが、他業種と異なるのは1か月あたりの残業時間45時間を超えるのは1年6か月までという規定は適用されないことです。